一歩たりとも譲らない嫁
豆腐の水をよく切って、小ネギやショウガを散らし、食卓へ運んだものの、醤油さしが空だった。
ちょうどタイミングよくヨメがキッチン内にいたので「醤油がきれてます」と伝え、補給してもらう。 ちなみに我が家では、数種類の醤油をブレンドするのが今ハヤっている。 そうなことはどうでもいい。
「ハイヨ」と、醤油さしをオイに渡すヨメ。 「ホイ」と受け取る。 そして豆腐の頭上から並々と醤油を注ぎ込もうと醤油さしを傾けた瞬間「ボトリ」という音をたてて、醤油さしの頭が取れた。
我が家の醤油さしはガラス製であり、頭だけでも結構重たい。 そんな醤油さしの頭が豆腐の上に落ちたものだから目も当てられない。 豆腐はまだ一度も箸をつけていないにもかかわらず、グシャリと中心に穴が開いた。いくら木綿豆腐だからって、この衝撃に絶えられるはずはないのである。
豆腐がつぶれただけならまだしも、当然のごとく醤油はテーブル上にぶちまけられ、とても文章では語りつくすことの出来ない有様。 そこで隣に座っていた息子がいち早く反応し、オイの頭めがけて平手をかます。 「おーべーか」
いやこの有様は欧米でなく日本である息子よ。 しかもオイは醤油さしを傾けただけであって、醤油さしの頭を緩めたつもりはない。 犯人は間違いなくヨメだ。 醤油を補給したヨメでしかない。
「くぅオラ、オメエ、醤油さしの頭ちゃんとしめなかっただろうが。」すごい剣幕で文句をいうと一言「ちゃんとしめた」と言う。 「ちゃんと閉めていないからあふれたんだろうが」なんてツッコムと「たしかにちゃんと閉めた」としか言わない。 言い張る言い張る。
そういや前にも苺を食ったクセに食っていないと言い張ったことがある。 こりゃダメだ。 掃除しよ。