柳家小三治独演会@長崎
あっぷる収録の合間にたまたま見つけた小三治さんの独演会のビラ。 「な、長崎に来るの!」
すぐさまチケットを取った。
ビラをよく見ると、小三治さんの締めている帯が、自分が持っているのとまったく同じ帯である事に気づいて上がる。 「きっと何かの縁だこれ」
昨日その帯をして行ってきた。 前座の方の噺はイケスを泳ぐ鯛の生き様。
ある日海から釣り上げられた鯛はとある料理屋のイケスに放りこまれた。
中には鯛ばかり何匹も泳いでいる。 新参者のこの鯛は、「先鯛」たちにイケスでの振る舞い方を伝授される。
なかでもこのイケスで20年にもわたって生き続けている親分鯛の話は、「どうやったらイケスから揚げられて船盛りにされないようにするか」という術(笑)。
鯛の仕草も実に巧く、見ていて本当に天然の鯛だった(爆笑)。
さて小三治さんの登場だ。
無表情で、仕掛け人形みたいに頭の位置を上下させずに歩いてき、座ったらまずお茶をススる。
先の豪雨の話から長崎大水害の事。 ホテルから望む長崎港の美しさから、それが最近ひょんな事により台無しになった事。 同窓会の話からガキ大将との一悶着、そして和解から流れるように「長短」の噺へと突入した。
表情は基本崩さずに話し方、声のトーンでドッと沸かせる。 仕草はまさに仕草にあらず、実際そのもの自体を行っているかのような緻密さである。
モニター越しでは分からぬ客の臨場感と一体感。
すべてが最高だった。
NBC新春寄席 柳家小三治・柳家喬太郎・柳家三三 三人会
小三治
前座が終り、座布団が裏返され、湯呑みが運ばれてくる。 湯呑みの位置がマズかったのか、一旦置き直される。 そして小三治の登場。
酒の噺。 酒癖が悪い事で問題の起きた藩の殿様が、酒を一斉に禁止する。 さて当の殿様は無類の酒好き。 なんとか隠れて酒を飲み、酒屋に秘密裡に酒を届けよと脅迫する。
酒屋は酒を菓子折りだと偽装して門を通り過ぎようとするが、門番から中身を物色される。 菓子折りにしては中身が重そうだと中を開かれ徳利が出てき、これは何かと問われれば「水カステラ」だと酒屋は申す。 そこを味見する門番。 門番もまた酒に飢えておりペロリ一升平らげてしまう。
改めて今度は油屋だと徳利を提げて通ろうとするがまた門番にひっかかり飲み干される。 以下略(禁酒番屋)。
小三治師匠は量はさほど飲まないものの酒好きらしく、酒蔵を巡ったりもするらしい。 それが芸に活きており、酒の飲み方、酔い方が実にすばらしかった。
喬太郎
新作落語。 ホワイトデーのお返しに悩むモテない男の噺。 何より枕が秀逸で、恵方巻きをこれでもかとディスる話芸が光った。 お客もうんうん頷いて、いかに恵方巻きが喜ばれていないものなのかが改めて認識される決起集会となった。
三三
空き巣に入った泥棒が、荷物をまとめて出て行こうとする所に帰ってきた主人とオカミのイザコザ。 語り口が軽快でテンポよくトントン進む話は心地よい。
噺家はまくらで世間話をしているワケでなく、ここで今日の客にはどの噺がウケるのかを計っているらしい。 なので演目を何にするのかは事前に決めておらず、座布団に座ってから「これで行こう」となるワケだ。
一流の芸を見ていると心が洗練されてゆく。
(1/23日追記)。