タタキで一杯:ぢどり屋 三味
長崎思案橋の飲み屋街、そこにポツンと佇ずむのは「ぢどり屋 三味」。
決して目立つ店ではない。 でもその看板が前から気になっていたのは、つまり地鶏のタタキが好物だからだ。
入口から中の様子はうかがえない。 さらに周囲は喧噪まみれだから中が賑わっているのかそうでないかも検討がつかない。 つまり、初入店にはいささか敷居が高い店なのである。
しかも現代には珍しく、検索しても情報がまったく出てこない所がかえって興味をソソルわけで、いざ引き戸を開いた。 中には作業着姿のお客が一人、焼酎グラスを片手に頭上のテレビを見上げていた。 かたわらに居るのがたぶんオカミさんだろう。
手狭な店内にズラリとキープボトルが並んでいるのを見れば、常連さんの多さがうかがえる。
早速地鶏のタタキを注文すると力なく、か細い声で「あい」と返事したオカミさんは、厨房へと下がっていった。
カウンター内でのオカミさんの姿はこちらからはまったく見えない。 ただ、今しがた起動された「ゴゥー」というドライヤーのような機械音だけが鳴り響く店内なのであった。 たぶんその装置で、タタキを焼くのだろう。
はじめに出された枝豆をつまみながら10分ほど経過した頃、タタキは出された。 新タマネギの上に盛られた肉は、想像していたよりもずいぶん細かい。
「これがポン酢で、それユズコショウね」
とオカミさん。 注文した焼酎ロックを出してくれた後、再び先客と静かに談話をはじめた。 「近々あの店も立ち退きするんだってねえ・・・」
タタキはもちろん、ジャクジャキとしたいかにも地鶏な歯ごたえで、早くも焼酎のおかわりをお願いする。 細切れだから、つまむ際箸から抜け落ちる事もある。 そこで敷かれたタマネギとからめながら、つまむのがよい事に気づく。
しばらく食べ進むにつれ、皿のポン酢に柚子胡椒を溶いてタタキの上に回しかけ、タマネギと和えながらつまむのが一番旨いという結論に至る。
タタキを一皿、ビールを一瓶、焼酎を二杯で2300円。 「地鶏旨かったです」と伝えて店を後にした。
長崎の夜はこの店から始めても良いかもしれん。
※ちなみにビールは瓶であり、キリン・アサヒ・サッポロから選ぶようになっている。 焼酎の銘柄は島美人だった。
ぢどり屋 三味
- 長崎市本石灰町3-2
- 095-823-9319