FARM SUZUKIの牡蠣
牡蠣を送ってくれたのは、広島の友人だった。
この夏ふたりで某所のオイスターバーを訪ねた折、連日満員なのにたまたま空きがあったので入ったところ、これがまためっぽう牡蠣は旨かったのだが、店の対応がデタラメで、すごい不愉快な思いをしながら逃げ帰った事があった。
「一押しの牡蠣なんで、ウチでマッタリつまんでね」とのメモ書き。
ファームスズキは、瀬戸内海の大崎上島にある、牡蠣を養殖している会社だ。 なんでも塩田の跡地で養殖しているそうで、それが味に影響するのだという。
箱には小ぶりの牡蠣と、大ぶりのものが同梱されていた。 小さなほうは生で、大きいのは焼いて食べるよう指示されているが、どちらも生で食べられるらしい。 となれば当然生でつまむに決まっている。
牡蠣おこしに手袋、レモンまでが添えられていたのには驚いた。 こちらは酒だけ用意すればよいという幸福。 これほど晩酌が待ち遠しかった事は、かつてない。
いざ実食。 箱のままデンとテーブルに乗せ呼吸を落ち着かせてまずは小から参る。 牡蠣を開けさせたらオイの右に出る者なし、難なくパカリとフタを取り外す。 現れたのは、瑞々しい御牡蠣だったが手に持った瞬間予想した通り、かなり小ぶりな身をしている。
口へ流し込めば、やや鉄を舐めたような気配がし、その後甘味が舌に広く行き渡る。 そこへ酒をガブッと行けば、この世の全てに感謝したくなる程満足感に包まれる。
一点気になったのは、身が幾分塩辛い事だった。 そこで同封の説明書きに目を通せば、「むき身は海水を含んでおり塩辛いため、必ず水洗いせよ」との注意書きがあった。 この季節になれば毎年殻付の牡蠣をつまんでいるが、殻を開けて、水洗いした事など一度もなかったので意外だった。
洗うのも面倒だし、その塩味も風味のうちだと思えたから、そのままバンバンつまみまくった。 それにレモンをしぼれば、まったく気にならない。
続いて大の牡蠣を。 殻も肉厚で、身もプックリ厚みがありソソる。 即流し込めばもう、「クリーミーとはつまりこれを指す!」と断言したくなる濃度にマッタリ。 個人的には本来火を通す用である「大」のほうが好きだ。
以上を電話で友人に伝えたら「お返しは何を送ってくれんの?」と聞かれたので長崎の何かを送ろうと思うがヤバい、明日で本年終わりだ。