たくちゃん
小学一年生のたくちゃんは、すごい特技を持っている。
それは他のどの子よりもいち早く、シーズンになるとまず真っ先に、クワガタをハッケンできるという能力だ。
夏になれば朝、公園にあるクヌギの木によじ登るたくちゃんの姿を毎日のように見る。 スルスル降りてくればいつも、手にはクワガタを持っている。
「僕はこの木のどこにクワガタがいるか全部知ってんだ。 まずあそこでしょ、それとあそことあっち」
休日、次男と散歩していたら、クヌギにたくちゃんの姿があった。 「さすがにまだ早いのでは?」と思えば、やはり手にクワガタは無かった。
「たくちゃんおはよう、最近どう調子?」と聞けば、なんと答えたと思いますかたくちゃんは。
「夏になったらまた毎日クワガタとりたいからさ、今から下見してんの」
だって。
こうした日々の努力が積み重なった結果が、たくちゃんに驚異のクワガタハッケン率をもたらすのだろう。 「努力できる事は才能である」という言葉をどこかで聞いたが、まさにそれを地で行く少年なのだ、たくちゃんは。
たくちゃんは今回特別に、次男にこの木のポイントを教えてくれるという。
「いい? 絶対ほかの人に教えたらダメだぞ、わかった?」
次男は目を白黒させながら、ただうなずくばかりだった。