もらいもの
娘が「目がゴロゴロする」と言い出した。 登校前の慌ただしさの中まったくもって・・・眼科に行くべきか? そうしていると、突如玄関のドアが開き「ヨーイ」というなじみの声が聞こえた。 近所のお婆さんである。
もぎたての4、5本のきゅうりをゴツイ手でワシ掴みにしている。 「ほら食べれー」
毎度ありがたいのだが、ただ今娘は「ものもらい」の疑いがあり、病院へ行こうかどうか悩んでいるとことだと伝えたところ、そんなの何の問題もないぞとお婆さん。 「ほうきを持ってこい」と言う。
ほうきを差し出すやいなや、毛を一本むしりとったお婆さんは、毛先を娘のゴロゴロするほうの目へ近づけた。 そして「メッ、メッ、めーっ!」と三回唱え、すかさず前掛けのポケットからライターを取り出し、毛先に火をつけた。
すると毛先は「パチパチ」と音をたてて一瞬燃え、線香のように煙が立ち上った。 「ほら、パチパチ言うたやろうが、パチパチ言うた時は、もう治る証拠たい」
意味不明なので聞いてみると、昔からものもらいの時は、ほうきの毛を一本むしりとり、それを患部に当てるフリをしながら「メッ、メッ、メッ」と三回唱えてから燃やすと治ると言われているらしい。 「パチパチパチ」と、小気味よい音がたてば即治り、そうでない場合はただちにではないがそのうち治るということらしい。
「ふーん。 で、娘。 どうする?病院に行く?」と聞いたところ「たぶん大丈夫かも」という返事。 結局そのまま学校へ行き、その後目がはれることもなかった。 効いたのかもしれない。
頂いたキュウリは、ボールに塩をひとつかみ入れて水を張り、氷をドッサリ入れてからその中へ突っ込んだ。 キンキンに冷えたところで引き上げて、武骨に1センチ程度のナナメ切りにし、素朴に塩をふってつまむのだ。 もちろん、モロキュウにしてもよいし、いちいち切らずに丸ごとまぶりついたほうがかえって良かったりもする。
旨いキュウリを喰うには、まず真っ先によく冷やす事だと、歯にしみてわかる。
余談。 ものもらいのことが気になったので広辞苑で調べてみると、正式名を麦粒腫というらしい。 オイは、ものもらいのことを子供の頃から「めもらい」と呼んでいたのだが、全国で様々な呼び方があることを知った。
- 北海道:メッパ
- 青森:ヨノメ
- 岩手:ノミ
- 宮城:バガ
- 秋田:ホイト
- 山形:バガ
- 福島:ノメ
- 茨城:モノモラエ
- 栃木:モノモラエ
- 群馬:メカゴ
- 埼玉:モノモレー
- 千葉:モノモレー
- 東京:モノモライ
- 神奈川:モノモライ
- 新潟:メッパツ
- 富山:メモライ
- 石川:メモライ
- 福井:メモライ
- 山梨:ノメ
- 長野:メコジキ
- 岐阜:メンボ
- 静岡:メコンジキ
- 愛知:メンボ
- 三重:メンボ
- 滋賀:メーボ
- 京都:メーボ
- 大阪:メバチコ
- 兵庫:メバチコ
- 奈良:メバチコ
- 和歌山:デバツク
- 鳥取:ホイタ
- 島根:メボイト
- 岡山:メボイト
- 広島:メボ
- 山口:メボ
- 徳島:メイボ
- 香川:メボ
- 愛媛:メボ
- 高知:メボー
- 福岡:オヒメサン
- 佐賀:ナイマズ
- 長崎:モライ
- 熊本:インノクソ
- 大分:メイボ
- 宮崎:メイボ
- 鹿児島:インモレ
- 沖縄:ミーンデー、ミンベー
と、いうことらしい。