あぐり
漁港をうろついていたら、おじいさんが網の山に埋もれてガサゴソしていた。 近寄ってみると、漁に使う網を補修しているところだった。 話しかけると気のいい方で詳しく説明をしてくれた。
「こいは網仕事言うてね、定期的にせんば漁師はつまらんと。 だってさ、網の破れとったら網ば投げたところでしょうがなかたい。 魚の全部逃げてしまうもんね。 だけんが、こいば使うて、網のほつれとる所ば修繕するとたい」
目の前に差し出されたのは、網を補修するための、いわば針だった。
この道具は市販されているものではなく、おじいさんが自分の使いやすいよう手作りしているものだ。 触らせてもらうと、すべすべしていた。 名前を「あぐり」という。
「この道具いいですねー、綺麗ですね」と何気につぶやいたら「一本やるけん」と貰ってしまった。 そしてすぐ近くにあるおじいさん宅に案内され
「ここで、こがん風にして漁の道具ば色々作りよるとさ」
と、作業場を見せていただいた。
古びた小さな机の上には手入れの行き届いた彫刻刀や砥石、紙やすりの束が整然と並べられており、作業場というよりもむしろアトリエと呼んだほうがしっくりくるような妙に落ち着く空間だった。
いただいた「あぐり」は、額装してみようと思っている。
余談
近くの直売所に入ったところ、面白い貝を見つけた。 「シロミル」という名前らしい。 そういえば鮨屋のネタケースで見かけたことがある。 試しに買って帰ったが、そういえば肝心な、どうやって食べるのかを聞き忘れてしまった。 刻んでバター炒めにでもしてみるか。
ほんと!すごく美しい道具ですね。
どんな感じの額装になるのでしょうか。こちらまで楽しみです。
たまに行く飲み屋さんに飾ってある「カメオ」の額がすごく良くて、譲ってくれないかとお願いしているのですが、まだ実現していないんです・・・。 サイト拝見いたしました。 素敵な写真でいっぱいですね!