予期せぬキャンプ
とある理由でキャンプへ同行することになった。
親子水入らずで過ごすはずだった休日をこのような形でフイにするのはいささか気が引けるが、友人たっての頼みだから断れなかった。
メンバーは10人。 キャンプ場に着いたら、まずはカレー作りからということらしい。その手際を眺めていると、恐ろしいほど危なっかしい庖丁さばきで野菜を切っている人がいる。 見ていてこちらが何度もヒヤリとするほどで思わず「大丈夫?」と声をかけた。
すでに調理に飽きてきた人がチラホラ見えてじき、ビールを飲んでいるのかカレーを作っているのかわからないという仕込みになっていった。 たぶん、完成までにはだいぶ時間が必要だろう。
氷の詰まったクーラーボックスの中からコロナビールを引き抜いて、キャンプ場周辺を散策した。 海を見渡せる高台で、景色を撮ったり寝転んだり。 しばらくしてキャンプ場へ戻ってみると、カレーは煮込みの段階に入っていた。
「なんか水っぽいんです」と鍋の前に立つ女性。
鍋をのぞくと色からして超薄味のサラッサラカレーである。 何故か肉の姿がほとんどない。 味見してみると・・・食えたもんじゃない。 薪を倍増してガンガン焚いて半量以下に煮つめるか、ルーを買いに走るよう助言をした。
キャンプ場では多くの人々が夏を楽しんでいた。 ほほえましい家族の光景が目に入ったので、その人たちの近くに腰をおろして今回唯一つ持参してきたものであるタイガーの魔法瓶を取り出した。 中にはよく冷やしたお気に入りの日本酒を入れてある。 杉の猪口でチビチビやりはじめた。
父、母、娘二人の四人家族だ。
お父さんは炭をおこし、慣れた手つきでバーベキューの準備を黙々とこなしている。 上の娘さんは小学5、6年生ぐらいだろうか。 妹と一緒にじゃれあっている。 フリスビーを取り出して放り投げた瞬間犬が飛び出してきたので五人家族だ。 お母さんはその光景に笑みを浮かべながらビデオカメラを覗きこんでいる。
それにしても、せっかくの酒なのに、サカナは友人の焼いた焦げっぽいトウモロコシのカケラだけ。 どうしてオレは今このキャンプ場にいるのだろうと人生について深く考えこんでしまった。 カレーはまだまだ仕込み中。 そうしているうちにあたりは暗くなり、キャンプファイヤーが燃え上がった。
炎の熱は凄まじい。 2メートルほど離れているのに、熱風が肌を吹きつけてくる。 いいもんだなあしかし。 炎を見つめていると、ひょんな事を思い出した。
小学生の頃友人宅に遊びに行き、ベランダから外をぼんやり眺めていたら、向かいのマンションの窓から白くて長い白蛇が伸びたり縮んだりしている。 窓から出ようとしているのか、それとも入ろうとしているのか。
驚いたオイは、急いで友人のお母さんにその事を伝えると「まあそれは大変!」と大騒ぎになった。 お母さんは外に飛び出て、一体どの辺から蛇が出入りしているのかを教えるようベランダのオイに呼びかけた。
「そこです!ほら、二階の窓のところからニョロッと出たり入ったり・・・ウワァ また出てきた!」
いくら実況してもまったく通じないから外に出て、「ほらあそこです!」と指差した先にあったものは、風に揺れる白くて長いゴムホースだった。 ブランブランと揺れている様が、真横からみると長いものが伸び縮みしているように見えたのである・・・。
気がつけば、猛々しかったファイヤーは燃えカスになっていた。
ゴムホースの話は、今回オイをベーベキューに誘った男の家での出来事だ。 チビリチビリ飲みながらその話をしてみたら、まったく覚えていなかった。 だよなあ、あの時オマエはスペランカーに夢中だった。
結局カレーは翌朝になりようやく完成した。 昨晩真っ先につぶれた男は、朝からスイカ割りをしようと意気込んで大玉を抱えて走ってきたが、ウッカリつまづいてそれを落としてしまった。 その瞬間の「グヮシャ」という音を聞き逃さなかった。 完全には割れてはいないがそのスイカ、すでに割れている。
アナログキャンプでしたね。ウチはオートキャンプをやっていますが、最近は何かと便利なものが多くて、美味しい料理とお酒でまるでリゾート感覚。友達は「おしゃれキャンプ」と呼んでくれます(笑)。キャンプ場で「ぷちぐる」料理も可能ですよ。実際にレシピ参考にさせてもらってます。