ミニピザの海苔はさみ
全ての家事を同時進行しながら今晩の夕食、ギョーザを焼いた。
食卓について鉄板を取り囲み、「焼きあがるのは今か」と待ち構えている子供たちの視線は熱い。
「チリチリ音がしてきたよ!」と長男が知らせてくれた。 前もって「ギョーザの焼ける音がチリチリなりだしたらおしえてね」とお願いしておいたのだ。
ひとまず洗濯物の山を置いて、鉄板へ向かう。
フタを開くと、蒸気がモワッとたちのぼり、蒸し焼きにされて、皮の上からアンがうっすらと透けたギョウザが現れた。 1列6個のギョーザが計4列。 大皿にひっくり返すと、底面はこんがりキツネ色に焼けていた。 でかした長男、これぞベストな焼き加減。
ギョーザの並んだ大皿へは四方から一気に手が伸びるが、熱々なために皆すぐ口に入れることができない。 しばらく小皿のポン酢+ラー油の上で休ませてから、ハフハフしながらほうばってゆく。
空いた鉄板にはもう一度油を引いてから、次のギョーザを並べてゆく。 水を差してフタを閉め、チリチリいったらまた教えるようことづけてから、洗濯物の山に戻る。
いそいそ洗濯物をたたんでいると、まだ「チリチリコール」の前だというのに「ギョーザおかわり!」という声がする。
24個のギョーザは、アッという間に子供たちの胃袋へ納まってしまったのだった。 「もうちょっとゆっくり喰え」。
鉄板へ向かい、様子を見るも、焼き上がりにはまだちょっと早い様子。 あと3分は焼かねばなるまい。 でも子供たちは「待ちきれん!」といわんばかりにオイの顔を見上げてくる。
仕方がないので試しに1列皿に返してみると、やはりキツネ色ではない。 でも火は十分通っているから喰えなくもない。 残り3列も皿にあけて、またギョーザを並べてから今度は食器の片付けをはじめた。
おそらくこのペースで子供たちが食べ進めば、オイの喰う分はおろか、カミさんの分も足りなくなる恐れがある。 成長にともないみるみる食欲を増していく子供たち。 嬉しい反面、仕込みが大変。 みんな年頃になったらどうなるのだろうか? オイは朝から晩まで一日中、食事の準備に追われてしまうのではなかろうか・・・(たぶん娘が助けてくれるだろう)。
ということで予想通り、オイの分のギョーザは、無い。
今度からギョーザの際は1.5倍仕込むとして、今晩は何を肴に飲むことにしようか。 もう口の中はギョーザだったんだけど、しゃーない。
冷凍庫をまさぐると、イカの下足が見つかったので、これを急いで解凍し、鉄板焼きにすることにした。
それだけではちょっと心もとないので、今度は冷蔵庫を漁ると、ギョーザの皮が見つかった。 あれほどギョーザの皮が残らないよう調節しながら包んでくださいと頼んでおいたのに、カミさんは大量に皮を残してしまっている。 おそらくこれが、今回のギョーザ不足の原因だろう。 ギョーザ1個にあんを包みすぎた結果がこれだ。
忙しいからと、カミさんにまかせると大体こうなる。
ギョーザの皮の上に「とろけるチーズ」を盛って、軽く焼けばビールのつまみになる。 いわゆるミニピザだ。 ジャンクすぎるフードではあるが、これがまたちょっとオイシイ(話は変わるがピザのみ焼きというものある)。
鉄板に皮を並べてチーズを乗せ、トロ火で焼き焼きつまむ。 時折タバスコをたらしたりもする。 ギョーザをたらふく食べて、もうごちそうさまをしたはずの子供たちは、オイが何か変わったものをつまんでいるのを発見し「何それは?」と近寄ってくる。
「食わせろ」と言っているのだ。 仕方なく一枚ずつ焼いて渡した。 長男、長女は「アツアツ」いいながらも両方の手の上をあっちこち移動させながらかみつくことができるが、次男はそれができない。
そこでとっさに、目の前にある海苔箱から一枚海苔を取り出して半分に割り、それにミニピザを載せてから半分折りにして渡してみた。

その瞬間、この形、どっかで見たことがあるというような気がした。 「鮨屋だ・・・」
たまに行く鮨屋では、まずはじめにデカい貝柱の薄切り(何貝だったっけ、失念)を炭火で炙ったのを、同じく炭火で炙った海苔ではさみこんでからスイッと目の前に差し出してくれる。
それをそのまま受け取って、かじりつくわけだが、それに外見がそっくりなのだ。
試しにオイも次男と同じように、海苔ではさんでつまんでみたところ、これがなんと、こともあろうに、味もよく似てしまっているではないか。 「アボカドのワサビ醤油」をはじめて喰った時と同じ衝撃を受けた。
これは飲み会の席で、十二分に活躍できる味、インパクトを持っている。 今度この「ミニピザの海苔はさみ」を、皆に食べさせるのが楽しみでならない。