和民礼讃
居酒屋で黒ホッピーを十何杯呑んだところで目の前の野菜炒めに顔から突っ伏したのだという。
本人はそれを覚えていないが、数人の同行者が目撃し、後始末をした事実だそうだ。
今日の飲み会は、そこでやるらしい。 その店はいくつか支店のある大衆酒場で、安い旨いそして情緒があるという話。 なかなか面白そうだ。
路地裏にあった。 ガラガラとガラス戸を引くとL字型のカウンターがある。 その上にはメニューの張り紙がびっしりと並ぶ。 大人数なのでテーブル席で一杯やることになる。
メニューを眺めると赤枠で囲まれた人気メニューに眼が止まる。 「モツポン 280円」が一番オススメの様子。 とりあえずそれと生、あとタン煮込み。 あとはホッピーくんに委ねよう。
間髪入れず、生が運ばれてきたところで即乾杯!グビーっといく・・・はずだったが口をつけたとたん、これは厳密にいうとビールではない飲料だということがわかった。 それもかなりレベルの低いものだった。 くーっ、久っさしぶりにマズいの飲んだ。 これでは悪酔い必至、何かに顔突っ伏してしまう。 だが残すのはしのびない。 ハナをつまんで一気に飲み干し即、さつま無双の焼酎ロックを疑念満々で注文した。
ところがちゃんと本物の焼酎ロックが出てきたことに軽く驚きつつ、いつの間にかテーブルに運ばれていた人気のモツポンをつまむ。 悪くない・・・だが・・・良くもない。 ボリュームはちょっと少なめ。 まあ、値段が値段だからねえ。
続いてタン煮込みをつまむが、モツポンと同じ感想。 もやしのナムルをつまんでみると、油が多すぎる割には塩気がまったくなかったので、醤油をまわしかけた。 たぶんこれは、もやしにラー油をかけてレンジでチンして作ったのだろう。 塩気がないのは入れ忘れだと思われる。 まったくもって、ヒドイ。
しばらくおいて、誰かが注文した「炭火焼きさつまいも」が届いた。 それを見て思わず唖然とした。 注文した当人を探し出し、ホントにこんなブツがメニューに載ってるのか、そして注文したのかをを確認した。
鉛色をした給食皿風の器にたったふた切れ乗せられた芋は、真っ黒こげであり乾燥してパサポサ。 200円。 これは料理ではない。 「金払うから食べて」といわれても喰わない。 素材と客に対する侮辱であると感じる。
飲めるワケねえ。
安かろうが、マズくて食えないものばかりじゃねえか。 気分悪くなったことを含めるとかえって高い。
「あのさあ、場所さあ、変えようよ。」
満足げなのはただ一人、「ホッピー突っ伏し男」だけ。 会計は、大して安くもなかった。
こんなハズじゃなかったので、どこで飲もうか迷う。 迷うがすでにアルコールが若干入っている身、一刻も早く、ちゃんと飲みたい。 目の前に坐・和民がある。 和民でいいじゃないか、行こう!
しばらくぶりの和民だ。 暗い照明の中靴を下駄箱に入れてどっかりと座り心地のよい椅子に腰掛ける。 すぐさま礼儀正しい店員さんが注文を聞きにくる。 生を人数分注文し、メニューを眺める。 美しい写真と共に、多種多様な料理が載っている。 どれもみな、まともかつ美味しそうだ。
鉄板ステーキとカツオの叩き、お新香を注文しメニューをまわした。 次々に運ばれてくる料理はみな煌いている。 もう見ただけで、美味しいとわかる。 しかも安い。 さっきの店よりも絶対に、安い。 焼酎ボトルも安い。 何でも安くて美味しい。 和民って、こんなにいいお店だったんだ。
そう気づかせてくれたのはさっきの店。 和民が天国に思えてならない。 もう最高。 和民大好き。 これからは和民のことをもっと愛す。 ワタミのメニュー、とくとご覧あれ→ワタミフードサービス株式会社