寒ぶりのはらご
2月頃のことである。
魚屋の店先に巨大なブリの腹身が横たわっていた。 その脂身のキラメキからすると、たぶんおろしたてなのだろう。 この季節、まさに寒ブリでないの。 ちょっと大きすぎるけど、ええい買ってしまえ。

もったいぶって、まずはしっぽのほうから食べはじめた。 皮付きで軽く炙り、刺身にした。
次の日、垂れ落ちんばかりに脂を蓄えた真っ白な腹の部分を刺身にした。
最後の日、マグロでいう大トロの部分に手を出した。 魚の脂身の味、ブリ特有の旨み、香り、醤油すら弾いてしまうキメの細かい肉。
ひとつひとつの素晴らしさについて、ぬる燗を飲りながら目を閉じて考えた。 でも何も考えずに味わったほうが美味しい。