シメに苦労した末しめしめ
この黄金色をした麺は、一体何なのか? これを語るには、まず昨晩の事を説明しなければならない。
炙りシメサバで奥播磨をたらふく飲って、満足だ。 ヘタな料理屋に通うくらいならば家で飲んだほうがマシだ、さ、シメ食って晩酌を終えよう。
何でシメようか…。 スープはなにもないし、そもそも麺がないな…。 チッ…ソーメンしかないではないか。 うーんどうしても今日はソウメンという気分ではない。 がしかしシメを食わねばしまらぬわけであり…でもしゃーない、今日は素麺でよい。
でもいつものように出汁とって醤油たらしてという味付けはどうもピンとこない。 どうすっか。 あ、そうだ、デタラメ麺を作って遊ぼう。 デタラメ麺とは「オイのみ」食べることが許される限定料理であり、大変危険なものである。 日によってその内容は変わり、コンセプトはあるものの、作り方はデタラメだ。 当然マズいこともあるが、激ウマな場合もたまにある。 (一例:心平そーめん)
たとえば残った鶏がらスープにマルタイの棒ラーメンを放り込み、付属の粉末スープを適量入れて、チューブ入りのラードをありえないぐらい、常軌を逸した分量投入して世のベタカタラーメンにどの程度脂が含まれているのかを調査してみてみたり、同じように作ったデタラ麺に、化学調味料を一瓶の半分くらいドッサリと盛りいれてみて、食べてみたり。
いずれも想像するよりも以外や以外、食える代物が出来上がるというのが恐ろしいことであり、喜んでいいものか 、嘆いてよいものかを深夜、キッチンで一人ポツンと悩んだりするわけだ。 当たり前のことではあるが、この麺を、嫁や子供、ましてや他人に食べさせることはできない。 オイ自身がモルモットと化さねばならないのだ。
そして今晩、どんなデタラメ麺を作って遊ぼうかとしばらく思案した後に思いついたのが、ソーメン甘醤油風味である。 スープもない、出汁もない、ソーメンしかない。 この状況で、まずオイは湯を沸かした。 そしてその中にソーメンを放り込み、適度に湯がいた。 そしてそこへミリンをドボドボと注ぎ込み、さらに醤油をたらしこんだ。 少し味見してみるが、甘味をまるで感じない。 さらにミリンを追加投入する。 この麺の目指している風味は、某有名ラーメン店のスキヤキのような甘めの醤油味で、何度か食ったらやみつきになるかもしれないよ、という風味である。
甘味がそれらしくなったところで、豚肉か何か投入してコッテリさせたかったのだがあいにくそれがない。 なので、サラダ油を小さじ一杯たらした。 醤油ベースのスープだと、意外と脂が目立つ。 これにて完成とする。
酒が回っているので、ネギを切って散らしたりとかいう小細工はできない。 そのまま丼に盛る。 ススル。 これがまた、意外と食えたので驚く。 スープは一切使っていないので手抜きもいいところだ。 なのに、マズイ醤油ラーメンを食うよりはよほどマシな、しっかりとした味があるのだ。
たとえばこれに、カツブシの一番出汁を加えてカツオの風味をプラスしたら………きっと、あのラーメンよりも美味しいはずだと、酔った頭は考えた。 シラフのときは作ってみようとも思わないし、味の保障はできない。 もしもオイと同じような暴挙に挑戦するならば、全て自己責任でお願いしたい。 深夜と、酒が、オイにデタラメ麺を作らせるのである。