ホスピタ冥利
山陰の街を歩いてきた。
まずホテルにチェックインし、エレベーターに乗ったところで、相乗りしようと60代の男性が走ってきた。 その間ドアを開けておく、というごく自然な事をしただけなのに、とても丁寧にお礼を言われ、少し照れくさかった。
めいいっぱい写真を撮ったところで今度は別のエリアに移動してみるかと電車に乗る事に。 街は人通りが少なくとても静かなのに、駅はけっこう混んでいる。
長い列に並んでいたところ、大荷物を背負ったおばあさんがやってきた。 列を超えねば向こうに行けないから、一歩下がって道を譲ったところ、深々とお礼を言われて、逆にこっちも「丁寧なお礼をありがとうございます」とお礼を返す結果となった。
酒蔵を訪ねて、試飲をさせていただいたところ、「飲みっぷりが良いから」という理由で猪口にザブザブ注いでくれた蔵元さん。
なんでもこの地域には二十以上の蔵があるそうで。 別の蔵でまた試飲させていただいたところ、こちらでも並々注いでくれた。 昔使われていたのであろう、とても古い金庫が目について、撮影の許可をいただいたところ「もっと古い使ってないものありますよ」と、見たこともない古い道具を山ほど引っ張り出してきてくれた。
この街はおもてなしにあふれている。
宮崎県小林市のPRムービーみたいなのを是非作るべきである県は。
一日を終えて歓楽街を歩いたら、やはり人通りは少ない。 閉めてしまった店も目立つ。 でも賑わっている酒場も所々あり、入ってみると普通の居酒屋なのに、日本酒だけは地酒がズラリとメニューに並んでいるという楽園。 ここでは「銘酒だけ揃えておけば我名店である」というおかしな態度をとる店は一軒もなかった。
やはりこの街はPRすべきでないのかもしれない。