運動童子観
「今日から世界陸上始まるよ」
教えてくれたのは次男だった。 夏の楽しみ(奇数年)をウッカリ忘れてしまうほど、忙しさにヤラれていた自分がザンネンだ。
「録画しなきゃ!」
と言えば、すでに息子が一週間先まで予約をしてくれていた。 今や歴としたスポーツオタクである。
ボルトの試合もハシリ幅跳びも、全部今日どの競技が行われるのかも把握している。
100m決勝。
ボルトの表情が、予選からしてやや曇っているような気がしたのは私だけだろうか。 時折見せる他の選手との談笑や、マスコットキャラへのカラミ等、これまで見たことないようなシーンが見えて、もしかすると彼自身が一番分かっていたのかな、と感じた。
ガトリンは素晴らしかった。 ただ、決勝への入場からゴール、あげくは表彰式までもブーイングが起きていたのはなんでだろうと検索したら、ああそういえば、ドーピング問題あったよなと思い出した。
一度不正をしたらもう、以降は白い目で見続ける層がいるという事だろう。 忍者みたいに早いコールマンを刺して一位になるほどの35歳だから、努力はもちろんの事、精神力も相当なものだったろう。
一位が決まった瞬間の彼は、飛び上がって喜ぶでもなく、なにか悪い事をしたのを見つかったように、眉間にシワを寄せて「シーッ」という仕草をした。 その後座り込んで流したアクのとれた涙には、いくつもの意味が込められていたのだろう。
ファラーに関しては、最後の一瞬、コーナーを回る時にフラついたりしており、もしかしてこのまま負けてしまうのかと思いきやあのラストスパートである、恐ろしい。 10キロに渡る、精神戦はきっと、肉弾戦よりも過酷に違いない。
そういえば投擲競技を見てもワクワクしなくなったのは、やはり室伏さんがいないからだろう。 氏の投げるハンマーの行方を見ていると、暑さも吹き飛ぶ勢いであり、よくテレビの前で一緒に吠えたものだった。 次なるスターの誕生を願う。
もうしばらくは、夏の風物詩として選手たちの活躍を肴に、良い酒を呑めることがこの上ない幸せである。