おっと失礼
スーパーに着いてすぐ、小用を致したくなったので真っ先に雪隠へ直行した。
すると先客がおり、あいにくここには一席しか無いもので、後方で待っていると「あーっ、ふーっ・・・」と安堵のため息をもらされたから「わかるわかる」という感じでいたところ、初老のおじさんはそこでうしろの気配に気づいて「あ、失礼」と席をゆずられた。
そこでこちらも早速用を済ませ、今度は洗面台へ向かうと先のおじさんがおり、鏡の前で一生懸命何度もベルトを締め直している。 近頃痩せたのか、それとも太ったのか、穴の位置が定まらないらしい。
しばらく後方でじっと待っていて、でもそれにおじさんは気づかないようで、今度は髪を直しはじめた。 濡らした手で髪を丁寧に七三に撫で付けてから右、左からしげしげ顔を眺めて「よし、これしかない!」という表情をしたところでオイに気づいたようだった。
「おっと失礼」と言われたので軽く会釈で返し、入れ替わった。
買い物中前方から、かのおじさんが奥さんらしき方と一緒にカートを押しながら歩いてきた。 目礼を交わしながら、すれ違った。 「今のどちら?元教え子?」という奥さんの声が後ろから聞こえてきた。
