オーキッド
蘭。 野生に咲くものだけで2万5千種。 人工交配によって生み出された品種は13万に及ぶという。 そして全ての品種は、イギリス園芸協会が発行するリストに記されている。
19世紀のヨーロッパで大ブームが巻き起こり、王侯貴族はこぞって珍しい蘭を求め、ついにはオーキッド(蘭)ハンターなる人々も現れるようになる。
人々を魅了する蘭の魅力を、『青い鳥』の作者、メーテルリンクはこう評した。
「植物の知性が、最も完成度が高く、調和のとれた形で現れているのが、蘭だ」
蘭の知性とは?
それは、他の花にはない特徴的な花びらである「リップ」があるということである。
リップは何のためにあるのかといえば、誘惑するためにある。 誰を?動物たちをだ。
花粉を運んでもらう動物に対し、「花粉はここにあるんだよ」と知らせるために、リップは特徴的な形をしていたり、ド派手な模様があったりする。 リップめがけて飛び込んだ動物は、まんまとリップのワナにかかり、知らずのうちに、体に花粉をなすりつけられることになる。
と、ここまでは美の壷「蘭」を見て得た知識。
大変面白かったが、ひとつだけひっかかるところがあった。
バルボフィラム・ロスチャイルディアナムという、長ったらしい名前の蘭は、 リップが人間の舌のような形をしており、飛んできたハエがリップに止まると、すぐに前方に投げ出されるしくみになっている。 投げ出された先にあるのは、もちろん花粉である。
その舌の形をしたリップは、ハエの好物である「肉の塊」に似せた姿だといわれている。
「ハエの好物である肉の塊に似せた姿」
なるほど。 でもさあ、似せることって、似せたい元を知ってなければ、できないことだよねえ。 すると何かい。 蘭は、肉の塊の事を知っているってことになるんかい。 ハエは肉が好物だということを知っているということになるんかいな。
そりゃあ凄い話だよ。 蘭には、知性があるっちゅうことになる。 サボテンには感情があるとかいう話を聞いたことがあるが、植物は、我々が認識しているよりも、もっとすごい存在なのかもしれない。
とカミさんにここまで話したら「そこに反応してきたか」と言われたが、そこにしか興味はない。
それにしても「といわれている」ということばの多い番組だった。
- 蘭は、今なお美しく進化を続けているといわれる。
- 蘭は、新しく出現した種であり、生存競争に勝ち残るために多彩に進化したといわれる。
- 野性の蘭の多くは、木の上や、岩肌に咲いている。 それは、新しく地球上に現れたため、 生存に適した場所は、ほかの植物に占められていて、特殊な場所に根を下ろすようになったといわれている。
- 舌の形をしたリップは、ハエの好物である「肉の塊」に似せた姿だといわれている。
本当のところは、まだ何もわかっちゃいないのかもしれない。 もしも「といわれている」が真実ならば、蘭ってすごく気遣う人だ。
いつも楽しく美味しく拝見させていただいています。
野暮で無粋なツッコミでしたら申し訳ありませんが、本当に疑問に思っていらしているかもしれないと考えてコメントさせていただきます。
ここで言う「似せている」というのは一種の擬人化表現ですね。
正確に言えば、太古の昔に偶然ほかの花よりもほんの少しだけ「ハエの好物である肉の塊に似た」花が生まれ、それは他の花よりも少しだけたくさん蠅を集められたのでより多くの子孫を残せ、そうした多くの子孫の中で再び偶然生まれた他よりもさらにほんの少しだけ「肉の塊に似た」花がよりたくさんの蠅を集め、その子孫がたくさん残し……っていうのを何万年何十万年も繰り返すうちに肉の塊によく似たリップが生まれるのです。
多分今も蘭は、自分の形が蠅の好きな肉の塊に似ていることは知らず、何故かこの形だと蠅がたくさん集まるんだよなという程度にしか思っていないです(もちろんこれも擬人化表現ですがw)
全てご存知の上での記事でしたら、完全に余計なお世話ですので、このコメントはそのまま消していただいても結構です。
それでは。
コメを一度してみると、どんどん書いてみたくなりました。なるほど!「似せる」と言うと本当にそんな意味ですね。今まで同じ表現を他で耳にしても気づきませんでした。(たとえば昆虫の擬態であるとか。)
おそらく「ハエが好む形」に変異した株が受粉率の高さゆえに繁栄して、結果的に肉塊に似た形が残ったというのが本当でしょうが、「似せる」という言葉によって、蘭があたかも知性があるように感じさせられる・・・言葉の魔術ってすごいですね!(それに気づかれるオイさんもすごいです。)
そらさんこんにちは。
本当に疑問に思っていたんですよ。 なるほどですねー、大変詳しい説明をしていただいて、どうもありがとうございます、メモさせていただきました。