我が家独特食品
小学生の頃の話。
夏休みを婆ちゃんの田舎ですごした。 今晩何を食べたいのかと聞かれたので、「カレー」と答えたら、一緒に買出しに行くことになった。 ジャガイモ、ニンジン、ひき肉、そして青い箱に入ったカレールーをカゴに入れたことをよく覚えている。
帰宅し、早速婆ちゃんはカレー作りに取りかかった。 その間オイは、まだ何も植えられていない、耕されたばかりの畑で、土の柔らかさに感激しながら、靴を脱いで素足でその中を走り回っていた。 遠くでヒグラシの声がする。
しばらくしてカレーができた。 テーブルについてスプーンを手に、カレーがでてくるを待った。
婆ちゃんは、大皿に「これでもか!」とテンコ盛りにしたカレーを運んできた。 ていうか、これは一体?
婆ちゃんの作ったテンコ盛りカレーは、オイの知る一般的なカレーの外見から、かけ離れたものだった。 え、なにが違うかって?
まず第一に、卵が入っていること。 「あ、それならば大阪の自由軒みたいじゃん」ちがう。 溶き卵なのだ。 溶き卵が、カレー一面を覆っているのである。 ちょうど溶き卵が入った中華丼のような外見。
さておきせっかく婆ちゃんが作ってくれたものだ。 一口すくって食べてみると、これがまた甘い。 カレーなのに甘い。 というか、カレーの甘辛という範疇を超えていて、なんて表現したらよいのだろう・・・ちょうど、魚の煮物のような甘辛さだったのだ。 田舎だから輪をかけて甘い。
味のどこにも、市販のカレールーの味が見当たらない。 婆ちゃんは、あの青い箱のカレールーを使って作ったのだろうか本当に。
という、強烈な記憶が残っている。
そのカレーは、婆ちゃんなりの解釈の上作り出されたカレーだったのだ。 いわば「我が家独特食品」。
東海林さだおさんの丸かじりに、我が家独特食品の話があった。 その前にもう一度説明しておくと、我が家独特食品とは
「え、すき焼きではじめに牛肉を焼く際に投入した牛脂ってみんな食べないの? 家ではずーっと、あのあめ色になった牛脂を、誰が食べるかで大モメしてたんだけど、あれってウチだけの話だったんだヘーいま知った」
みたいな食品。
東海林さん家の独特食品は、肉天である。
豚肉のこま切れを刻み、おなじく刻んだタマネギと一緒に衣をまぶしつけたかき揚げが肉天だ。
醤油で食べる。 東海林さんが子どもの頃の大ごちそうだったという。 実際作ってみたところ、予想通り、旨くないワケがない。
※ところでみなさんも、我が家独特食品をお持ちではありませんか? 当ブログでは投票をはじめました。 我が家独特食品の投票を心よりお待ちしています→「我が家独特食品」は何ですか?。