ラムネ

ラムネを飲んだのは一体何年ぶりなのだろうか。
そもそもラムネの瓶を見かけることすらなかった。 キンキンに冷えたラムネを氷樽から取り上げてすぐさま封を開け、付属するポリ製のビー玉落とし(名前何だ?)をバコリ、と叩くと「シュワーッ」とかいいながら瓶の口からラムネが泡を立ててこぼれおちる所に唇を押し当ててススル、という風にはならなかった。
開かんぞこれ。
昔は瓶と同じく水色をしていたこのビー玉落としはまったく機能しなかった。 でも色だけではなく、構造も進化している様子。 オイの叩き方が悪いのかもしれん。 もう一度右手をパーで打ち下ろした。
相変わらすラムネはあふれ出ず、「ポロッ」とビー玉落としはどこかへ転がっていった。 役目を果たさずに逃げるとは卑怯なヤツだ。
はっきり言わせていただくと、そもそもビー玉落としは必要ないのだ。 少年時代から、ラムネを開ける際には右手の指と決まっているのだ。 瓶を固定し、人差し指をビー玉に押し当てる。 瞬間的に力を入れると、瓶の中にビー玉は落ちて、シュワリとラムネがあふれ出た。
飲んだ直後に「クーッ、ヤッパ夏はラムネやな」と言ってしまおうと一応コメントを用意していたのだが、大して「クーッ」ともこなかったので、何も言わずすぐに息子に渡した。
やっぱ開けるまでがラムネだ。 冷やしてブンブン振ったラムネを20本ぐらい長テーブルに並べて、はじから順に間髪いれずズボズボ開けてやりたい衝動にかられつつオイの夏は終わった。