トマトのおでん
「トマトのおでん」と聞くとすこし驚いてしまうが、実際おでん種として存在するのだという。
その元祖は目白にある関西風おでん屋の「田のじ」らしいが、現在はコンビニのおでんにも見られるそうだ。
この話は東海林さだおさんの「コロッケの丸かじり」にあったもので、それをつい先日読み返し、早速作ってみようと思い立ったわけだ。 作り方といっても簡単。 まずいつものようにおでんを作る。 トマトが食べたくなったら、トマトのヘタをとり、反対側に十字に切れ目を入れて、おでんのツユの中に放り込む。 5分経過したらトマトを引き上げ、小鉢に盛り、トマトが半分隠れるぐらいにツユを入れる。 ただそれだけ。
トマトを何時間もグツグツ煮込むわけではないのだ。 なのでトマトにおでんの味は染み込んでいない。 皮はズルむけている。 見慣れない光景にすこしとまどいながらも、とりあえず箸でトマトを突き崩し、食べてみる。
アウ。
カツオ出汁と醤油で作ったおでんダシと、トマトの酸味、いやそれ自体の味が妙に合う。 なんでか? 聞くところによると、トマトは旨味成分であるグルタミン酸の濃度が非常に高いそうだ。
同じく昆布にもグルタミン酸が豊富に含まれており、カツオ出汁は昆布と鰹節でとったものであるからして、鰹節にはイノシン酸が含まれているわけだし、その両者が相見えると、素晴らしい相乗効果を発揮するとかいう話をラーメン作りの時に学んだような気がする。 とにかく、ウマイ。
東海林さんは全27冊に及ぶ(07/10/22現在)丸かじりシリーズで度々おでんのことを書いている。 「おでん」と題目のついたものをザッと調べてみると以下の通りだった。
鯛ヤキの丸かじり
- おでん屋襲撃:韓国ではなんでもかき混ぜて食べる。 ではおでん屋に…という話。
駅弁の丸かじり
- おでん革命:おでんのツユは和風ダシに醤油と決まっている。 が、このままでいいのかという話。
タケノコの丸かじり
- おでんをいじめる?:おでん食い方とか作り方がいじめるでどうとかいう話。
パンの耳の丸かじり
- 冷やしおでん見参:冷たいおでんの話。
おでんの丸かじり
- 「静岡のおでん」は…:静岡のおでんは串が…という話。
- 難物、おでんの袋もの:ためつ、すがめつ、袋ものを注文した男の観察記ほか。
パイナップルの丸かじり
- 自販機からおでん:秋葉原での話。
コロッケの丸かじり
- 韓国おでんの串は:新宿コリアンタウンで食べたデッカイおでんの串がどうのこうの…という話。
- トマトのおでん:この記事の話。
以上9題
このように東海林さんは再三にわたりおでんを語っておられる。 東海林さんのおでんに対する情熱が伝わってくる。 情熱は伝染する。 だからあなたもひとつトマトのおでんを実行してみるべきである。
※さらにこのあと東海林さんはコンソメスープでトマトを同じように煮てみたら美味しいということを発見し、飲んだあとのシメとして大いに期待できると書いておられる。 オイはまずはじめにごく普通におでんを楽しみ、中盤でトマトのおでんを食べて、あとに残るトマト色に染まったおでんダシに、色んな種を浸してトマト風味をプラスし、再びおでんを楽しむという食べ方が好きだ。