主なのかもしれない巨大ヒラメ
年の瀬の慌しい市場をうろついているとひときわ目立つ黒山の人だかりがあった。 あー、たまに顔出す魚屋さんの店先でないの。 鯨のタタキ売りでもしてるのかな。
そこでオイが見たものは、平目だった。 ただ、このヒラメが普通じゃないところは、とにかくデカいということだった。 座布団よりもデカく、たまにパクパク動く大きな口にはギラリと鋭い刃が見える。 こんなヒラメ、いままで見たことがない。
「こりゃーきっと、そこら一帯のヒラメの主だね。 おろすのはなんだか天罰がくだりそうで怖いや」なんて魚屋の番頭が言ってる。
それにしても立派なヒラメなので、一体何キロぐらいあるのかを尋ねてみたら、なんと7.4キロ!もあるのだそうな。 ヒラメはご存知のようにペタンコな魚であり、経験的にいうと2キロ程度のヒラメでも、世間一般常識的な観点から考えると「大きい」といえる。 それが7.4キロもあるなんて有りえない。なんともまあ厚かましいヒラメだこと。
魚屋の番頭さんは困り果てていて、巨大ヒラメが大きくて立派だし正月向きだと仕入れたのはよかったが、買い手がいないのだとつぶやく。 客に勧めてみても、こんな巨大なヒラメは使いきれんと避けられるのだそうな。 番頭はしかたなく、小分けにして売ろうかとも考えたのだが、どうも主であるような気がして気が引けて・・・。
そこでオイは決心した。 一生懸命考えて悩んだあげく、丸々一匹この巨大ヒラメを購入することにした。 大晦日だしさ。 ヒラメはそもそも高級魚である。 7.4キロのヒラメだということは、その重量分値段も高いということになるが、そこは足元をみて値切らせてもらうことにした。
丸々一匹買ったのはよいが、オイ家は現在4人家族(夫婦と幼い子供たち)である。 こんなデカいヒラメをどうやって食い尽くすのかという問題が浮かぶが、そもそも家族4人でなんて食い尽くせるハズがない。 やはり刺身で食うわけだが、ヒラメって薄切りにして食べるわけで。 カツオのように下駄の歯並にブ厚く切ってカブリつくわけにもいかないわけで。
数万円もする巨大ヒラメを勢いよく買えたのは、ワリカンにしようと考えていたからだ。 どうしても巨大ヒラメを買いたくて、そのとき頭に浮かんだ好きもの連中達と、みんなで分け合って食おうと思いついたからである。 なので数万円÷8の値段で巨大ヒラメを堪能できるというわけ。
持ち帰り、とりあえず嬉しいので、息子にジャジャーン、と見せびらかすと「ウヒョヒョー」という軽快で想像以上のリアクションをしてくれた。 ヨメに見せてみると、まさに化け物を見るかのような青ざめた顔をした。 食わずともこんだけ遊べるし、やっぱり買ってよかったわけである。
おろしはじめる前に一応記念として、メジャーで全長を測ってみたら、84センチあった。 84センチ7.4キロの巨体。 娘よりも大きいことに気付き、興奮する。 もうしばらく眺めていたいが、傷んでしまう恐れがあるので、さっそく解体することにしようか。 オイにとってはたとえこのヒラメが主だろうがボスであろうが関係ない。 さっさとおろして、食うのみである。
デカさ故におろすにも手間取る。 こんな分厚い縁側なんて初めて見たぞ。 これはきっと大人8人がかりでも食えまい。 正月はヒラメ三昧ということになり、たぶんしばらくは、ヒラメのヒの字も見たくはないという状態になるんだろうなきっと。
※以上をもちまして、美味かもん雑記帳、本年の更新を終了します。 いつもお越しくださる方々には大変感謝しております。 来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
去年も年末にコメント残させていただきました。
台湾に住んでいるゆきです。いつもいつも本当に楽しみにして読ませていただいてます。
軽快な文章に、するどい観察力、すばらしいお料理の腕前!
これからも続けて読ませていただきたくお願い申し上げます!
ご家族皆様共々よいお年を!!!!