初節句の席にて
とくに身内でもないのにこんな場所に居てよいのだろうかと思案するのもつかの間、ご馳走を目の前にそんなチマチマしたことは考えていられませんので、昼間っから酒をかっ食らうことにしたのでした。
子供らはヨメに任せておいて、と。 どっかに面白そうな人座っていないかな。 お、向こうの端っこに頭がトサカになっているおじさんがいるぞ。 リーゼントであります。 ちょこっと近寄ってみましょう。
早くも顔が真っ赤っかになっているそのリーゼントは強面そうだが酒にはめっぽう弱いらしく、ビールを2ミリずつぐらいチビリチビリとやっており、オイが「さ、どうぞ。」と、お酌をすると、いささか迷惑そうな顔色を一瞬見せたが、快く応じてくれて、なんと小コップ一杯のビールをグイと飲み干し、オイに微笑んでくれたのでした。 彼にとってはかなり大胆な行動でした。 その後は、若干気分がよくなったらしく、25分ほどソリコミについてと、白バイには族上がりが多いということについてお話していただきました。
ペチッ。バシッ。「あいたっ。」とかいう声が聞こえるので、そちらのほうに移動してみると、シッペ合戦をしている様子であります。 人差し指と中指で相手の手首を叩くというあれ。 一体何年ぶりにその光景を見たのかわかりませんが、とにかく白熱しているようです。 でもどうやらシッペの達人は一方だけで、相方はイヤイヤぶたれているようです。 手首がどす黒くなっていました。 これに巻き込まれたら大変なので、お酌をしに行くのはやめておきましょう。
あれはおそらく親子、母と息子ですな。 節句のお祝いを受ける本人であるかわいい男の子を前に、カメラについて言い争っています。 少し小耳をたててみると、なんでも何故母はデジカメを持ってこなかったのだ、こんな時にデジカメをもってこなかったならば、一体いつ使うのだというようなことを、息子さんが青筋たてて、怒鳴りちらしております。 手には写ルンです。 そんなにデジカメで撮りたいのならば、何故自分で持ってこなかったんでしょうか。 お酌をしに行くのはやめておきましょう。
あれ。 隅っこでもう寝込んでいる人がいます。 仰向けで、白い泡をふいているのですが、大丈夫なのでしょうか。 とりあえず横にしておきましょう。 「すみません、この人ヤバイですよ。 病院いったほうがよいのでは?」
真っ白いスーツに身を包んだ、なんだかキリリとした姉さんが、息子さんを横に焼酎を飲んでおります。 顔はよく見ると、友近によく似ているのですが、カッチョイイ眼鏡と、ゴージャスな髪型のおかげで一見すごく美人さんに見えます。 自前で料理を持ってきているそうなので、しばらく一緒に飲みますか。
さっきのシッペ組は今度はデコピン勝負に変わった様子。 やはり一方が達人みたいで音が違います。 しかしデコピンて。
お、妊婦さんをハッケン。 お腹大きいです。 もうそろそろ出産なのではないでしょうか。 美味しそうなチーズたちを目の前に並べ、白ワインをグビグビやっています。 これはちょっと食べさせてもらいましょう。 美味い! しかし、妊婦さんなのにそんなに飲んで大丈夫なのでしょうか。 すこし心配であります。
あー疲れた。 オイはこれから子供らを水族館に連れて行かねばなりません。しかしいったいどんな身内の集まりなんだ? この節句。