あの頃
少年時代の夢を見た。
やけに鮮明な夢だったからいたたまれなくなり、夢に出た町、つまり子供の頃に遊びまわっていた地域へと車で向かった。 場所が近づくにつれ、懐かしい景色や様変わりしてしまった区域が目に入る。
夏休みになれば毎朝セミ取りに行っていた公園はまだあった。 あんな広いと思っていたのに・・・まさにネコノヒタイ的公園。 遊具は大幅に減っていたが、子供たちはガヤガヤ楽しんでいる。 砂場での大山作りに熱中している少年たちに、つい過去の自分を重ねる。
よく遊んだ友達の家は跡形もなく消えており、雑草生い茂る空き地になっていた。 「立ち入りを禁ず」と記されたボロボロの看板が、空き地になったのは最近ではない事を物語っている。 友人の部屋・・・二階だったからあの辺にたむろしてマリオやってたんだろうなあみんなで。 思わず指差して腕をグルグル回す。
日が暮れて帰り道。 真夏だとはいえ六時にはもう薄暗くなる工場地帯の長い道路。 民家も無いから気味が悪く、友達と一緒に「ワー!」と叫びながら駆け抜けたあの関門。 それが何とも、狭く短い直線通路だった。 イメージとのあまりの違いにしばし立ち尽くす。
ゆっくり歩いてそこを通り抜け、階段から見下ろした景色はまさに、昨日夢でみた光景そのものだった。 腹ペコで、今日の晩御飯は何だろう? と思案しながら駆け降りた記憶がまざまざと思い起こされる。