メニュー

2014/10/12 雑記

ふらりと鮨をつまみに行った時の事。

「はい、らっしゃい」と出迎えてくれた主人は綺麗な白髪に骨太の79歳。 おまかせのまま、黙々つまんでいたところ、まな板の上に置かれた包丁に目が留まる。

美しすぎる、と言ってよい柳葉包丁で、柄も刃も光っている。 かといって、おろしたての包丁なのかといえばそうでなく、丹念に繰り返し研ぐ事により生まれた独特の緩やかな弧線に目を奪われる。

刃先と刃元はクッとしまり、中はかすかに膨らんだ、極端に言うとカマボコ型をしており、サクを切る際の動きを観察すると、刃全体を用いながら、まるで魚の身肉が刃に吸い付いていくように、あっけなく、滑らかに切り分けられていく。

そこで「カラン」とまな板の上へ無造作に包丁を転がし、タネをつまみ、シャリをつかんで、握る。 握った後はまな板の上へ鮨を置いて、指先でサッと全体の形を整えてから客へ出す。

普段見慣れている鮨職人のそれとはやや違い、まるで模型作りに没頭している少年のように、背中を丸め、肩をすぼめて一カンを生み出す。

腰が曲がっていると思っていたが、どうやらそうでないらしい。 何十年もの間繰り返された作業により、姿勢がその状態で固まってしまったのだ。

主人の所作を眺めながら呑む酒は格別だった。

毎日板場に立つが、八時頃になるとあがってしまう。 となると傍らの二代目の出番になるが、息子さんの包丁は主人のと対照的な包丁で、丸みが無く細長い直角三角形をしており、柄も少々黒ずんで、見ていてほれぼれするものではなかった。

かといってその手業は熟練で、見ていて面白いように、可憐に刺身を作り上げる。 道具に対する思い入れこそ違いはあるが、技は確実に受け継がれているのだった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

けんた食堂が本になりました

けんた食堂が本になりました『うちめし道』

最近の記事

ふぐの子糠漬 2024年12月12日

月例報告2412

来年もより良い年になるよう日々

続きを読む

2024年11月30日

月例報告2411

今年も残すところあとひと月。 

続きを読む

2024年11月27日

【カメラ】iOS 18 にモノ申す【改悪】

どんどん悪くなっていっている印

続きを読む

グラス酒 2024年11月2日

酒税法いかに@さるYouTuberの意見

一体誰が得をする法律なのだろう

続きを読む


月別アーカイブ

カテゴリー
メモ
最近のコメント
タグクラウド
インスタグラムやってますー フェイスブックページへ ツイッターへ RSS 問い合わせ

ページトップへ