餃子の清ちゃん

メニューはビールと餃子のみ。 ハツラツとしたオカミさんがひとりで切り盛りして早51年、これぞ広島屈指の人気店、清(せい)ちゃんだ。
昔は旦那がやってた店なんだけど、亡くなってからは私一人でやっとるんよ(ニコッ)。
5時の開店を見計らいその30分前に予約の電話を入れるもつながらず。 そこで開店して即電話したらオカミさんが出たものの「ゴメン今日一杯なんよ~」と入店すらできず早2年。 ついにチャンスは巡ってきた。 もはや、
オイ:「開いてますか?」 オカミ:「何時から?」 オイ:「今から」 オカミ:「ゴメン一杯なんじゃー」
というやりとりにも疲れた為、「今から走ってお店まで行きます」と電話したところ、「今からじゃったらエエよ~」とオカミ。 想いは通じた。

5時を過ぎたばかりなのでまだ明るい飲み屋街に、ボワンと光る赤い提灯を目指して走る。 息を切らせて戸を開けば、何故か初対面だとは思えないオカミがカウンター内から出迎えてくれた。 「ホントに走ってきたん(笑)」 わずか7席のみの、狭き門である。
オカミ:「何人前にする? ひとつが小さいけえ、みんな二人前ならペロリと食べるよ」
もちろん二人前だ。 後から団体客が入り、4人前が出されるのを見たが、となると皿へ、餃子はグルリ円型に並べられ、その姿はまさに壮観だった。 「写真を一枚撮らせてください」なんて言えないから、次の際は是非4人前をと心に決める。
ものの5分で餃子は焼きあがる。 それを突出しのモヤシポン酢をつまみながら、ビールで待つ。 カリカリに焼けたミニ餃子である。 勇んでつまみ上げようとした時、オカミから食べ方指南が入る。
「まず餃子をつまんで。 そしてここが、ネギポケットね。 ここへネギを乗せて、上からモヤシをかぶせて食べるの」

なるほど焼きたての餃子を事もあろうに濡らして食べるとはどういう事かとまず脳裏をよぎったが、オカミさんの言うことには逆らえない。 言われるがままやってみると、マズい理由が見つからない。 しばしビールも飲まず一心不乱に「清ちゃん食べ」を実践する。
時々何もつけずそのまま餃子だけをつまんでみると、やはり焼き面のカリカリ感が秀逸だ。 焼いている様もつぶさに観察したところ、なるほどカリカリのヒケツはそこにあるのか(まとめ:清ちゃん焼き)。
二人前の餃子を前に、瓶ビール一本で足りるハズは無いからもう一本。 でも店には次々とお客が訪れるから長居はできない。 早々に楽しんでお会計を。
ところがここで「あずきアイス食べる?」と聞かれて躊躇する。 これから街を徘徊する予定なのでお断りしたいところだがオカミさんの言う事だ、頂戴する。

よほど冷やされたのだろう、岩みたいに固いアイスだ。 早く食べて席を立ちたいがままならず、これほどアイスバーを一本食べるのに苦労した事はなかった。
かじりながら、なぜこのタイミングでアイスなのかを考えた。 たぶん・・・清ちゃんは狭い故、アイスが出てきたら会計時だよという合図になっているのではなかろうか? 否、単にオカミ心からのおもてなしの一つなのだろう。
清ちゃん
- 082-249-0836
- 広島市中区銀山町13-11
- 月~土 17:00~22:00 日祭休