ジョブズは言った
水道の蛇口をひねればいくらでもタダの水が出てくるけど、みんなちゃんとお金を出してミネラルウォーターを買っているじゃないか。
ジョブズのヒット製品は革新性で勝負するから、価格競争に巻き込まれることはほとんどない。
多少高くても買いたくなる製品をつくることこそがアップルの強みだった。 「どの車もA地点からB地点への移動という意味ではやることは同じだ。 でも多くの人が、シボレーよりもBMWに高いお金を払う」とジョブズは言った。
みんなが賛成するアイデアにろくなものはなく、むしろ少数の人が賛成し、あとは反対するくらいのほうがヒットにつながりやすい。
ジョブズほど宣伝の力を信じている人間はいない。 アップル創業当時、資金不足にもかかわらず、一流広告代理店のレジス・マッケンナ・エージェンシーに広告を依頼している。 マッキントッシュのヒットは伝説のCM「1984」の放映がきっかけだった。中略
しかし、ジョブズは宣伝至上主義ではない。 最高品質の製品を作るのだから、最高の広告を求めただけで、その逆はなかった。
ピクサーの『ファインディング・ニモ』はディズニーCEOマイケル・アイズナーが酷評したにもかかわらず世界的に大ヒットした。
人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ。
「タマネギの皮をむくようにたゆまず考え抜くと、簡潔で当を得た解決に行き当ることが少なくありません。 多くの人はそこまでは粘らず、根気も続かないものです。 しかし、ユーザーはごまかせません。 求められているのは考え抜かれた商品だと私たちは考えています」
完璧な製品をつくることに勝る完璧な戦略はないのです。
ジョブズはプレゼンテーションの名手として知られるが、最初からそうだったわけではない。 初めて参加したコンピュータ・フェアでは、パンフレットはコピーしただけ、名刺はお粗末、服装は信用の置けない汚さだった。 そんなジョブズに、マイク・マークラは、本を買う人は表紙を見て買うのだと諭した。
「あなたは残りの人生の日々を、ただ砂糖水を売って過ごすんですか? 世界を変えようというチャンスに賭ける気はないんですか?」ペプシも確かにすばらしい会社だった。
技術的にも芸術的にも最高の作品にしたかった。
2005年9月のプレゼンで「大胆な発表をしよう」と登壇したジョブズは、リーバイス501の前ポケットの、さらに小さなコインポケットを指さし、そこから思い出したようにナノを取り出した。 そして、ぽつりとこう口にする。 「あれ、こんなところにあったよ」。
身の回りには危なそうに見えるものがたくさんあるが、これはいい兆候だ。 それは、その向こう側には何かひと山ありそうなのに、まだ誰も手を出していない時期なのだ。
ジョブズはお金儲けや規模の拡大よりも、すぐれた製品をつくることに徹底してこだわり抜いた。
熱意は人から人へと伝わるものだ。 つくるのが楽しい製品は、使うのも楽しい可能性が非常に高い。
偉大な製品は、情熱的な人からしか生まれない。
ジョブズが製品を「商品」ではなく「芸術品」としてつくったことだ。
商品でなくなれば、とにかく大量に売ろうとか、ライバルに勝とうとかいう考えはなくなる。 そして、役に立ちたい、美しくしたいという情熱に動かされるようになる。
「ものすごく大勢の人がマックを買うだろうと思うけど、僕らはそれを誰のためでもない、自分自身のためにつくったんだ」
残念なのは、彼らが最初から、つくった会社をいずれ売却するつもりでいることだ。 『いくらかの金は稼いだのだろうが、永遠の何かをつくり出したのか』と聞きたくなる。 悲しいね。
エンジニアではなく、芸術家。
すぐれた大工はキャビネットの裏に使うからといって、質の悪い木を使ったりしないものさ。
僕らはみな、この地上で過ごせる時間には限りがあります。 僕たちが本当に大事なことを本当に一生懸命できる機会は、たぶん二つか三つくらいしかないでしょう。 どのくらい生きられるか知っている人はいないし、僕も知りませんが、でも僕は若いうちに大事なことをたくさんしておかねば、という意識があります。
だからジョブズは、ipodの外見を損ねるものをあざけりの目で見つめる。 ある人がジョブズとのインタビューに透明プラスチックのカバーに入ったipodを持っていったところ、ジョブズは「モナリザに牛の糞をなすりつけた犯罪者」を見るような目を向けたという。
ジョブズは「傷や汚れをつけたくないからだ」という言いわけにいっさい耳を傾けずにこう言った。 「僕は擦り傷のついたステンレスを美しいと思うけどね。 僕たちだって似たようなもんだろう? 僕は来年50歳だ。 傷だらけのipodと同じだよ」
そんな感銘を受けたジョブズは、よりよい生を生きるために、こんな習慣がついたという。 「以来33年間、毎朝鏡を見つめて自問自答しています。 『もし今日が人生最後の日だったら、今日やろうとしていることをやりたいと思うか?』」
1980年、アップルの上場によって、ジョブズは二億ドルを超える資産を手にすることになった。親の財産を相続したわけではなく、まったくゼロから財をなした史上最年少の大金持ちとなった。
以上桑原 晃弥『スティーブ・ジョブズ全発言』よりグッとキタ所を引用した。