車引き上げ隊
早朝、ベランダでストレッチをしていると、近くでブォンブォンとエンジンを吹かす音がした。 やたらと吹かすものだから何事かと音のするほうへ行ってみると、坂道でワゴン車が立往生していた。
タイヤが空回りして坂を上れずにいるらしい。 近寄ると、運転手は近所の青年だった。 無理をしながらここまで上ってきたのだろう、左の後輪が裂けていてホイールも派手にひん曲がっている。 あたりに漂う焼け焦げたゴムの臭いに思わず顔をしかめる。
このままでは付近の迷惑になるので、とりあえず移動させねばならない。 ゆっくりアクセルをふむよう指示しながら、車を後ろから押した。 すると簡単に坂を上りはじめた。
そういえば以前、この青年のお父さんが車を畑に落とした際、たまたま居合わせたので、救出の手助けをしたことがあった。 車にロープをくくりつけ、まるで『おおきなかぶ』のように皆で連なり引っ張り上げたことを思い出す。
このすぐ近くで霊柩車が脱輪している現場に出くわし、運転手と一緒に四苦八苦しながら引き上げたこともあった。 後日お礼に抹茶カステラを頂いたんだっけ。 まてよ、他にもあるな・・・。
やけに動けなくなった車と出くわす。 この辺そんなに運転しにくいかなあ。