スイカ割り
危篤の件で見舞いに行き、その足で田舎へ。
ささやかなバーベキューをする予定になっているが、訳あって、オイは河原に行き鶏を丸ごと穴に埋めて焼かねばならない。 頭数はそろっているので誰かが肉焼き係をしてくれるだろう。
汗だくで河原から戻り、あらかじめ冷凍庫に入れておいたプレミアムモルツを一気飲みする。 冷たすぎて少ししゃっくりがでた。
バーベキューは順調に進行しているようだ。 いつものように、湧き水を大樽にためて、その中で瓶ビールとスイカを冷やしている。 スイカは孫たちの為にばーちゃんが用意してくれたものだ。
田舎に来る楽しみは、この湧き水にもある。 小さい頃は気にしなかったが、こんこんと水が湧き出ているということはすごいことだ。 湧き水に関しては水道代はタダだ。 使い放題である。 しかも手ですくってみると、まるで氷水のように冷たい。 そのまま飲んでみる。 うーんとうなるしかない。
もしもオイ家に水が湧き出ているとしたら。 流しソーメンをやり放題、ビール冷やし放題、水遊びし放題、洗濯し放題、なんでもやり放題、水は宝だ、いやっほう! と、テンションがどうにもならなくなるであろう。
子供たちはスイカ割りを始めるという。 もう少し日が落ちてからにするよう忠告するが、まったく聞いていない。 年長者の少年がテキパキと準備をする。
タオルを目隠し代わりに巻いて、その場で10回回転し、ヨロヨロと棒切れを持って歩き出す。 オイの方へ歩いてきた。 このままでは叩かれるかもしれない。 「もっと右、右!」とウソの指示を出す。 その先にスイカはない。
何人も試すが、10回転のキキメでだれもスイカを叩き割ることができない。 もう回転はやめようと、子供たちの話し合いで決定する。 回らなければ、簡単にスイカにたどりつく。 しかし目の見えない状態で棒を思い切り振り下ろすという行為はなかなかできない事のようで、スイカに棒が当たるが、割れない。 二度三度と振り下ろすが割れない。 どうやらこの竹棒が悪いようだ。
棒をその辺に転がっていた金属バットに変更して叩くと簡単に割れた。 写真係のオイは、金属バットを恐れながら、子供たちがスイカを割る瞬間を何枚も撮らされた。