彼好みの居酒屋
「ほらウマイでしょこの白センマイ。 センマイ刺っつったら普通黒いでしょうが。 なんでこれは白いのかというと、一皮むいてあるからなのさ。 一皮むくことで、臭みがなくなっちゃうというわけ。」
「こうやって白センマイをつついて焼酎飲んでいる間にあそこで備長炭に火をおこしてくれているわけ。 見える? やっぱ肉は備長炭で焼かんといかんからな。」
「よーし炭きた。 さあ、焼け焼け。 まずはその豊満なミノを焼け。 いやまて、やっぱ肉はワシが焼くよ。 ちょっとでも間違うと大変な事になるからな。 あのさーよくいるでしょ、一緒に焼肉行ったらさ、来た肉来た肉全部一遍に網の上に広げてさ、せわしくひっくり返すヤツ。 あれ最悪なんだよな。 肉は食べる分ずつ少量を網の上に置いて、愛情込めてじっくり焼けよって言いたいんだよ。 そう、こんな感じに。」
「うーんやっぱここの肉はウマイな。 全部もう一皿づつ注文しようか? 何々? もう腹いっぱいだって? 焼酎ロックをガブガブ飲みながら肉食ったから脂肪分がどうやら胃の中で冷え固まって重いだって? んなこたないよ、まだまだこれからだよー。」
「おーい、ハゲの兄ちゃん(店員を呼ぶ)」
「あのねー、いつも来てくれるのはありがたいんだけどオレはハゲじゃなくて坊主ですから(店員答える)」
「そんなのどっちでもいーよ。 今日持ってきたドラ焼き食べた? あれウマイんだからさ、裏でちょっとつまんでくればいいじゃないの。」
「いつもスンマセン(店員答える)」
「で、今日も特別飲み放題プランでオッケーなの? 3,000円で、飲み放題。」
「うーんでもね、大将に聞いてみないとちょっとわからないんですよ(店員答える)」
「んな固いこといわなくてもさ、いーでしょうが。 毎日来てるんだしさ。」
「ですよねぇ。 ハイ…わかりました(店員答える)」
「うっはー今日も飲み放題だ! さあ、どんどん飲んで。 何? 肉がつかえた? 何言ってんのー夜はまだまだこれからでないの。 この店のね、自家製酒盗がウマイんだから」
「おとといはね、よその店で軽く飲んだあとに来たらさ、もう閉めてやんの。 だからさガラガラって開けてさ、中に入ってみたらハゲがウマソウにまかない食ってやんの。 その横でさ、朝まで飲んだの。」
トイレに立った際に坊主の店員さんと少し話したところ、彼は二十日連続でこの店に来ているのだとか。 相当この店が好きなんだということはよくわかった。