かあちゃんのどん兵衛
学生時代のバイト先に、メチャ元気な婆ちゃんのおったとさ。
その婆ちゃんは、オイの「第二のばあちゃん」て言うでも過言じゃなかとばい。
今でも旅先から「今ここにおるよ!」って絵ハガキば出したりもする仲ばってん、その婆ちゃんに対する思い出の中で一番大きかとは、このどん兵衛さね。
バイトに入る度に顔ば出したて思うたら「お腹減ってなかね? ちゃんとご飯食べてきたね?」って聞いてくれるとさ。 その婆ちゃんからの最大のおもてなしがどん兵衛やったていうワケさ。
事あるごとにどん兵衛ば買うてきてくれるとさ。 そしてその場でお湯ば入れてススる…オイシカ。
「かあちゃん(ばあちゃんと呼んでも応えてくれない)、旨かですね。 オイは小さか時からどん兵衛バリ好いとるとですよ」
っていうたら、
「そりゃ良かった、いっぱい食べんね、もういっちょ作って食べんね!」
って婆ちゃんはニコニコするとさ。
ホント感謝しよったね。
でもオイの顔ば見る度婆ちゃんはどん兵衛ば食えと勧め続けてね。 たとえ飯ば食うてきて腹いっぱいでもどん兵衛ば食わんばやったとさ。
毎日同じ物ば食うとには耐性のあるオイでもね、さすがにどん兵衛ばっかじゃマイッテきてね…。 小学校の頃の担任がカップ麺ばっかい毎日食い続けたら血のピンク色になっとぞ!て言いよったとば思い出したりもしたとさね。
ばってん、
「かあちゃん、明日は焼きそばのUFOば食べたかとです。 たまにはどん兵衛じゃなかとばください」とか絶対言えんけんね。
だけんその善意ば無駄にする事はならんけん、必死でどん兵衛ば食い続けたね。 どん兵衛が主食て言い聞かせたね自分に。 米や水と同じタイ!てね(笑)。
次第にどん兵衛にアレンジば加えるごとなってきてね。
柚子胡椒ば入れてみたり、粉末スープば入れずにソースばかけて食べたりね。
しばらくしたらそれでも飽きてきてね。
その日もどん兵衛にお湯ば入れる準備ばしよったとさ。 蓋ばめくって、スープば取り出して。 そしたらそこでフと思うたとさ。
「このアゲはお湯に沈めんでもそのまま食えるやろ?」って。 かじってみたら結構ウマカとやもんね。
今度はお湯入れ前のアゲば一口かじる事に活路ば見いだしたとさ。
そうこうしよるうちにそのバイト先ともお別れなってね。 かあちゃんと会えんごとなるとのバリ寂しかったとさ。
約二年半にわたり週に三回どん兵衛ば食べ続けた事になるとかな。 「どん兵衛は金輪際、人生から卒業!」って思うたね。
ばってん時の過ぎて、今ではたまに自分で買うてどん兵衛ばススる時のあるとさね。 あんだけ喰い続けてきたとに不思議と食いとうなるとやもんねこのどん兵衛は。
作る時はかあちゃんば思い出しながら、お湯ばかける前にアゲば一口かじってから、柚子胡椒ば添えて食べるとがならわしばい。
幸いにも当時特盛はなかったごたるね(笑)。
どんらんどオフィシャルサイト。 面白かとよ。