キューネのザワークラウト

デパートの地下食品売り場を散策するのはとても楽しい。 中でも調味料コーナーを物色していると、時がアッという間に過ぎてしまう。
輸入物のカラフルな小瓶がズラリと並ぶスパイス棚を上から順に眺めていたら、一番下に巨大な瓶を見つけた。
ドイツ製のザワークラウトである。 手に取ると思った以上に重い。 裏張りを見ればたっぷり800g超入っている。 しばらく重みを楽しむかのよう瓶を回転させながら掌の上で転がした。
キャベツと塩だけで作られた本物だ。
たまになんちゃってザワクラを作っているが、それと比べるとずいぶん落ち着いた色味をしている。 たぶん白菜の古漬けのよう十分発酵し、爽やかな酸味があるのだろうと思い浮かべた瞬間、舌の上にその味を仮想体験してしまった。
もちろんカゴに入れた。 驚いたのは540円という激安価格に、である。

キューネ社のザワークラウト
- 白キャベツを刻んで塩漬けし、発酵させたアルカリ性食品。
- 酸味は酢を使っているのではない。 発酵由来の酸である。
- 煮込んでもサクッとした歯ざわりを保つ。
- キューネ(Kiihne)社は1722年ベルリンで創業されたビネガー製造会社。
さっそく味見してみようと、樽型の瓶をつかみあげ、キャップを勢いよく回した…と書いたがいっこうに開かない。 昨今体力の衰えを体の各部位で実感しているが、腕の力も相当落ちたと見える。 こんなのワケなく開けられるハズだったのに。
まだ開かない。 径が太いから回しにくくもある。 もしかするとドイツの瓶はキャップを回転させる方向が逆なのでは? というくらい開かない。 いったん瓶をテーブルに置き、腕組みして開封策を思案した。
「アッそうか」
ザワークラウトの開栓法
答えは簡単に見つかった。 よく考えればこれ発酵食品である。 瓶の内部はガスが充満しているハズで、その圧がキャップを押しているから開かないのだという結論に達す。
そこでクギを持ってきてキャップの中央に当て、金づちで「コンッ」と叩いたら「プスッ」と小さな音を立ててガスが抜けた。 すかさずキャップを回すとカンタンに開いてくれた。 できた穴はテープを張って閉じた。
意外と匂いはしない。 せん切りのザワクラを箸でつまんで口に入れた。 あっけにとられるほど酸味が無い。 しばらく食べ進むと、次第に舌が慣れてきて、豊かなキャベツの香りを感じるようになってきた。
豚肉と煮込んだところ、瓶の半量ほどはすぐに無くなってしまった。 酸味が柔らかいのでトマトソースと合わせてみたら両者引き立てあった。
ザワークラウトはドイツの漬物である。 これを韓国の漬物であるキムチと合わせてみようと思ったのは、たまたまキムチが目についたからである。 市販のキムチに、ザワクラをひとつかみ加えて混ぜ合わせたところ、大絶品となった。 ザワクラのかすかな酸味が甘ったるい国産キムチに酸味を与え、
本場のものに引けをとらぬ逸品へと昇華させたのである。 気をよくしてさらにザワクラを足したところ、より美味しいキムチとなった。
キューネのザワークラウトを美味しく食べる方法は、市販の安いキムチとあえるという思わぬ結論に至った。
追記:ザワークラウトのエイジングを楽しむ
最近気づいたのが、このザワクラは開栓してから1週間ぐらい置くと酸味が増してくるという事。 食べ進むうちに立派な酸味を備えるようになる。
記事、楽しく拝見いたしました。キューネのザワークラウト、余計なものが入っていなくて本当においしいですよね。なんちゃってバージョンも真似させてもらおうと思います。
開栓法についてですが、これは実は反対に陰圧で開きにくくなっています。そのため空気を入れると簡単に開きます。空気を入れるにはマイナスドライバーで注意深く瓶と蓋の隙間をこじって下さい。プッシュといって蓋が膨らみます。昔、この用途のオープナーがオマケで添付されていることもありました。
貴重なコメントありがとうございました!