白熊がんばれ
「アゴヒゲ(仮名)のオススメする店で、おいしいものを食べたことは一度もないよ。」と、二人口をそろえて言う。 ソンナコトイワレタッテ、今日はアゴヒゲとメシを食いに行かねばならない。 どーすんだ。
そしてアゴヒゲのオススメする店に到着。 雰囲気イイ。 シャレてる。 マスターは白熊みたいな人。 でてくる料理は、料理というかチンしただけというか。 安スナック並み。 梅肉を多用する料理ばかりだった。 はっきりいってマズい。 来なきゃよかった。 外見だけでお店選んだらこうなるんだよな。 アゴヒゲ、イイ大人なんだから。 もっとイイ店は沢山あるはずだ。 しっかり!! と、念力でアゴヒゲに飛ばす。
「あーそれはさー、デジカメで落として、インターネットで送ればイイんだよ。」なんて客の若い兄ちゃんにアドバイスしている。 おそらくデジカメで撮った写真を、メールに添付して送ればよいという話だと思うが、なんかどっかズレている会話のような気がする。 若者のIT知識に負けずという白熊のイキガリなのか。
グリル上に取り付けられたスポットライトがイイかんじですね。 とオイが言うと、「あーこれはさー、150ワット110ボトルなんだよ。 明るかろ!」と、自慢げである。 オイの3歳の息子なみの言い間違いをしていることにまったく気付いていない。(オイの息子は「お墓」を「オカハ」という。)
自分から振ってきた最近の景気の話に至っては、「バルブがはじけてからね、お客がパッタリ。 次来る時はもうこの店無いかもよ。」なんてヌカす。
「おしい」
何品か「これってわざとマズく作ったでしょ?」と思わず聞きたくなった料理があったが、おそらくその料理はたぶん作るときに、砂糖と塩を入れ間違えたとか、酢と酒を間違えたとか、そのような手違いがあったに違いないいや違いない。
鏡月をもってこい!@牛角
ご存知牛角で焼肉を食うことにした。
「えーっと、国産ロースください。」とメニューを指差すと、品切れだという。 その他国産関連を注文しようとしても、すべて本日品切れだという。 この店に限らず、最近では焼肉屋で品切れ品切れいわれることが多い。 とくに生肉関連。 生肉好きのオイとしては寂しい。
「それでは今あるメニューで、美味しいものをズラッと持ってきてください。」なんて注文して、しばらくキムチでビールを飲みながら、隣に座る姉ちゃんの髪型について議論しながら肉の到着を待つ。
続々と肉が運ばれてくる。 いっぺんに注文しすぎた感がある。 テーブルに乗りきれないし。 追い討ちをかけるがごとく、「厚切り牛タン」なるものを2皿サービスだといいながら置いていく。 牛タンの厚切りか。 なにゆえ牛タンを厚く切るのだ牛角。 牛タンは薄切りがイイんだよね。
まあ今回は焼肉で米を食らうつもりで来店したわけではないので、どっちかってーと、チビチビ肉をつまむ分量だけ焼きながら、少し飲みたいな、なんて考えているところ、同席者が肉を次から次に網に乗せていくものだから、網の上が肉だらけになるわけだ。 そうすると、焼きすぎの肉なんていうのがでてくるわけだ。 そして今までの経験上、焼肉をジャンジャン焼こうとするヤツは、大抵網の上に肉を乗せるまでが仕事、なんて考えているらしく、そのあとの世話を焼かない。 一度自分が網に乗せた肉は、ひっくり返し、食べて、胃の中に収めるまでが、大人を責任である。 それを誰も食わないのに次から次へと肉を乗せていくもんだから、オイたちのテーブルからだけ黒煙があがっているではないか。 オマエは焼き奉行か。 オマエの舌焼いて食ったろかコラ。
とまあ戦々恐々としてきてこの一席に一石を投じたのがこの店の店長(以下店長と呼ぶ。 てそのまんまじゃん)なる人物である。
「お客様~お飲み物はいかがなさいましょうかぁ~。」なんて天野君顔で尋ねてくる。 「そうねえ、焼酎ちょうだい。」と答えると、なんでも店長オススメの焼酎コーナーというものがあるらしい。 店長の指差す方向を見てみると、棚にズラリと焼酎が並ぶ。
「ふーんイロイロありますね。 中でもどれがオススメなの天野君(店長と呼んでいない)?」と質問すると、「この~ですね、明るい農村なんかオススメであるますよ。」という。 あー明るい農村ね。 それ家に常備しているんですよ。 と答えると、「我同士見つけたりけり候」といわんばかりの喜び方で、まるでなついた子犬がごとく、オイにベタベタしてくる天野君であった。 ていうか、焼肉食いながら明るい農村は飲みたくないのでパス。 「ほかにオススメはどれ?」
一瞬天野君の顔が曇りすぐ復帰し、次の焼酎の説明を始める。 なかなか面白い男なので、一通りの焼酎の説明をさせる。 ほとんどの焼酎で「今度ここの蔵元に行ってみようかと思っています。」という。 いうならば、「カワイイコを目の前にして、あんまりカワイイので、一度両親の顔を見てみたいな」という心境なのだろうかどうでもいいか。
さんざん説明させたあげく、天野君のオススメ焼酎コーナーの焼酎は決して注文せずに、鏡月を注文する。 焼肉つったら、やっぱ鏡月GREENでしょ。 なんか肉食ってるっていう雰囲気でるでしょう。 飲んだら次の日頭が痛くなるようなそんな鏡月を飲みながら焼肉を食うのが好きなのであるオイは。
ちなみに家で肉を焼きながら鏡月を飲んでも、まったくおいしいとは思わない。 この焼酎は、やっぱり焼肉屋さんで飲みたい個人的に。 そして飲む際には、キュウリを薄くせん切りしたものを中に入れると美味。
長期熟成酒マニア
かーつったく。 どの店で飲もうか。
たまにどの店で飲んだらよいのかワカランようになる時がある。 そんなときは、自分の嗅覚をたよりに、ただひたすら街中を歩いて、良さげな店を探す。
すぐ見つかるときもあれば、まったく見つからないときもあるわけであるが、さんざん歩き回ったあげく、結局出発点から一番近い店に舞い戻ってきて入店する場合もあるわけで、灯台下暗し。
一軒の酒屋さんの前を通り過ぎようとしていると、奥になにやら意味ありげな空間があることをショーウインドウごしに気付く。 入店。 酒屋らしく、お酒が売られているわけだが、どれも見たことがないモノばかりの日本酒である。
この店は日本酒の古酒専門店なのだそうで、さらに酒Barも併設しているとのこと。 うーんおもしろそうだね。 色んな種類があるけど、とりあえず片っ端から飲んでみるか。
そもそも長期熟成酒とはなんであるか? ちょっとまとめ。
自家熟成酒
自家熟成酒とは、お酒屋さんが独自に熟成させたお酒のこと。 要は、蔵元で熟成するのではなく、蔵から出た後の段階で熟成させたお酒なわけだ。 これならば、家に転がっている貰い物のマズい酒でも2、3年ほったらかしておくだけでできそうな気がしないでもない。
長期熟成酒
酒は古くなると色がついて、味、香りとも悪くなると言われるが、酒の造り方や貯蔵年数、温度等の好条件が整うと、思いも寄らない素晴らしい酒になることが分かってきたのだそうな。3年以上貯蔵すれば熟成の効果が顕著に現れることから、丸3年以上熟成させた酒を長期熟成酒と呼ぶのだそうな。
とまあこのような感じ。 飲む際もゆっくりと、味わいながら飲むのが当然なわけであるが、オイがグビグビ飲んだのは、寝越庵という酒。
2006年ものや2、30年寝かせたもの等飲んでみたわけであるが、とりあえずどれもみなおいしい。 樫樽なんかに入れて熟成させたりしているものだから、良い芳香があったり、酸味があったり。 ブランデーのようでもあり、紹興酒のようでもあり。 中には日本酒度-70なんていうおそるべき大甘口な熟成酒があったりと、面白い店である。
そんな熟成酒のつまみには、生半可なものではダメで、堂々と熟成酒に対抗できる風合いのするものを添えるのがよろし。 ということで、つまみも熟成モノということになる。
明太子を何年か熟成させて、からすみっぽくなっちゃったという熟成明太子をつまんでみたが、なかなかイケル。 とにかく酒であろうと、酒肴であろうと、熟成させないと気がすまないという店主のいる、変わったお店なわけだ。
「さー今日も美味しく飲めました。 さてラーメンでも食って帰るか。」 この言葉に反応した長期熟成酒マニアな店主。 「そ、それならば、オススメのお店がありますよ!」とのこと。 どりどり。 どこなんだねそれは?
実は焼き鳥屋であるが、ラーメンも置いていて、その店の焼き鳥もウマイが、ラーメンが超オススメとのこと。 醤油のあっさりとした、絶品なのだとか。 自称味のわかる男が真顔でススメル店なのだから、そりゃウマイんだろうな、ということで、その店へ向かう。
大体店の外観から怪しい。 よくある小さい焼き鳥屋さん。 店内も異常に狭い。 お店のママにからんでいるダメサラリーマン風の、酔いつぶれたダメおやじがウルサイ。 パリに行きたいのだという。
その絶品ラーメンが目当てなわけだが、とりあえず焼き鳥も2、3本食っとかないとなんか悪いので、皮レバーギンナンと、注文してみる。 「レバーは刺身にできるぐらい新鮮なモノだから、レアめに焼いておくね。」なんて女将が言う ものだから、いいなりになる。 さて、焼き鳥が焼けた。 かじる、マズッ。 ビールで流し込む。
こんなにマズイ焼き鳥というのもなかなかない。 マズイッ! あ、そうか 、ここは醤油ラーメンが絶品だった。 ということは、焼き鳥はオマケみたいなもんだ。 そうだ、そのはずである。 そして焼き鳥はほっといて、ラーメンを注文する。 チャーシュー麺にでもしておこうか。
ラーメンを注文すると、今までボーッとつったっていた兄ちゃんに電源がはいったらしく、動き出した。 動き出すといっても、狭い店内なので、体の向きを変えたといったほうが合う。 そしてその狭い店内の中でも、ひときわ狭いどう広く見積もっても、A3ぐらいのラーメン調理スペースで、ラーメンを作り始めた。 少しイヤな予感。
「はいお待ちどう。」と出てきたラーメンは、一見なんてこともないフツーの醤油ラーメン。 ナルトにシナチク、チャーシューがのる。 スープをススルマズッ。
マズイ。 おいしいハズであるラーメンがマズイではないか。 熟成マニアがイチオシするラーメンが、非常にマズイのである。 マズイというか味がしない。 ぬるい。 細打ち縮れ麺が柔い。 魚介系のダシが効いているっていったじゃないの。 あっさりとしてウマイといったじゃないのよ熟成マニアよ。
おそらくスープは湯に醤油を入れて、味の素かなんかを入れただけ。 魚介系のダシなんか、絶対はいっていない。 こんなマズイラーメン、食ったことがネェやコノヤロウ。 責任者、出て来いコノヤロウ。
食べ物は残してはいけないという教育を徹底的に叩き込まれたオイでも、もはや完食することもできずに目の前の責任者にカネを払い店を出て、熟成マニアにクレームの電話をする。 オイ:「あノねェ、マずイっテもンじャねエぞコのヤろウ。」
もしかすると、この一件は熟成マニアなりのシャレなのかもしれん。 「いやーあんまりマズくてビックリしたでしょ?ハハハ。」なんていうことだったら、まあよしとする。 しかし熟成マニアのリアクションが、熟成マニア:「え、マジすか。 おっかしーなー(困)。」というものだったからこそ問題である。 オイ:「一番最近でその店にいつ行ったの? だいぶ前じゃない? 最近味落ちすぎたんじゃない?」なんて聞いてみると、熟成マニア:「先週行きました。 ラーメン美味しかったッス。」と、答える。 ハハーンこいつ味オンチなんだわ。
熟成熟成言ってっから、とうとう自分の舌そのものが熟成発酵してしまったに違いない、イヤそうに違いない。
笑えるバーテン
「どんなに優秀なバーテンでも、いつも必ず最上のカクテルが作れるわけではないだよ。」「デキるバーテンというのは、カクテルの出来上がりばな、一瞬ペロリと味見をして、もしも自分の納得がいかないような出来だと、躊躇なく捨てて、もう一度作り直す。 これがマジメなバーテンなんだよね。」「ダメなバーテンというのは、その味見があくまでも形だけで、味なんてどうでもよく、とにかくよくできようが、できまいが、なんでもお客に出す。 これ最悪。」
なんていうウザい話を横で聞きながら、ズブロッカをあおる。 ここは、ごく普通のバー。 BARである。 バーテンはまだ若いがキビキビとした動作が見ていて心地よい。 がしかし、あまりにもカッコつけすぎているせいか、会話してもニコリともせずに、表情が変わらないために口もあまり開かず、声が小さい。 なんて言っているのかわからない。 そりゃ、その店のスタイルってのもあるんだろうけれども、少し感じわるい。 店変えるか 。
「あのーですよ。 この近辺に、バーテンさんオススメの、雰囲気イイバーなんかありますか?」なんて尋ねてみる。 「あります。」とバーテン。 「いま地図を書きますので少々お待ちください。」とのこと。 なんだ親切ではないか。
地図をお願いしてから、5分が経ち、10分が経ち、20分が過ぎた。 やけに遅いな。 一体このバーテンにとって、「近く」とはどの程度の距離のことを指すんだろう?とか、妹尾河童さん並の、俯瞰図を描いて説明しようとしているのではないか彼は?とか不安がよぎる。
しばらくして、バーテンがようやく戻ってきた。 「これです。」なんて、手書きの地図を差し出しながら、説明を始める。 そこでその地図が問題なわけである。 まず、字が超キタナイ。 君は小学生かね?といような、ヘタな字で、紙切れに、説明書きを加えているわけだ。 そして地図本体はというと、それはおよそ地図とは呼べそうもない、出発点と、到着点が一本の直線で結ばれた、というか、紙切れに線を一本引いただけというシンプルな地図なわけである。 一直線で到着できる場所ならば、そもそも地図なんて書かずに口頭で教えてもらえばわかるものだし、そんな地図で小さい声でヘタな字で、カッチョつけながら説明するものだから、わかりにくいのなんのってさ。 とにかく、店の名前と電話番号だけを聞きだして、一刻も早くこの店を出たいという衝動にかられる。
さらにその一直線だった地図は、我々の見ている前でみるみると線が加えられていき、判別しがたい文字が書き加えられていき、ゴチャゴチャになり、説明されているのかバカにされているのか、とにかくわからなくなり、どっちかっていうと、そのバーテンよりも、オイのほうが、その地図に書かれた場所を、把握できはじめたわけだ。 「だからココローソンでしょ。 その隣ってわけでしょう?」 バーテン:「そ、そうです。」
さて。 カッチョブリのバーテンに教えてもらったバーに到着。 近かった。 店内はやけに暗い。 内装やオブジェが、HRギーガ風のデザインであり、あまり好みではない。 バーテンはDr.スランプのマシリト博士風であり、どこかで平井堅にも似ているような気がしないでもない。 オイはまたしてもズブロッカをもらう。 相方は、ナントカっていうカクテルを注文する。 5時間近く飲みつづけているので、すこしまったりとしてきた。
そのマシリトが、カクテルを作る。 シェイカーに氷と共に材料を入れて、振る。 振りに振る。 手先だけで振る。 高橋名人の16連射並みのスピードでシェイカーを振りまくるのであるが、出来上がり間近の、そん時の、顔が、キモい。 完成直前にあきらかに2秒ほど白目をむいてこちらを見るのだか、あまりのキモさに、暗すぎる店内で凝視しつづけた。
もう一回見たいので、相方にカクテルを早く飲むようにせかし、また振らせる。 ホラ、やっぱり白目をむいてこっちを見る。 ハハハ。 この店は 、内装だけではなく、バーテンもギーガばりなのである。 あーおもしろかった。
居酒屋スナック
塗料のはげまくったカウンターに、若干湿り気を感じさせるイス。 8坪ほどの店内には、この店には不釣合いなほど気高いママがひとり。 おそらく若いときはそーとー美人だったはず。
一応居酒屋なので、おしながきがあるが、どれも料理というかスナックで供される程度のものばかり。「生と枝豆ください」と注文すると、なんだか迷惑そうである。 突然カランカラン、と、ドアが開く。 「あら、いらっしゃい。」と、ママ。 オイが入店したときとは手のひらを返すように一変したやさしいもてなしにて、お客を迎え入れる。
そのお客っていうのがまた、イイ味だしてんの。 風貌は昭和風。 ドデカイサングラスをかけている。 髪は長髪げ、ヒゲわっさりなんだけど、紳士風といったヨクワカランかんじ。 この人が、オイのとなりに座る。
なんだかとっつきにくそうな人に見えたけど、話をしてみると微妙に面白く、なんでも映画のプロデューサーなんだとかいって、オイにチラシを見せてくれて、小一時間、語りに語られる。 生命の、神秘を説かれる。 一呼吸おくごとに、焼酎をトクトクトクと、注いであげると、それを美味しそうに飲みながら、口も滑らかになっていく。
カランカランと、ドアが鳴り、またお客が入ってきた。 今度は3人。 やはりママは、やさしく迎え入れる。 皆常連さんなのだ。 ひとりはギターケースをかつぎ、もうひとりはデブっちょのおばさん。 そしてひときわ異彩を放つもうひとりは、見た目はまんま、内田裕也。 白髪のストレートなロンゲが、綺麗である。
ともかくこのお店は、この濃い常連さんたちの隠れ家であり、わりと一見さんはお断りといったようなお店なのである。 お客さんの年齢層は高く、オイは浮いちゃっている。 でもせっかくだし、楽しまなきゃ損でしょ。 と、仲間に入れてもらい、楽しく飲んだわけである。
三島由紀夫の話をさんざん聞かされているところで、「カランカラン」と、ドアが開く。 そこには、60過ぎ?ぐらいの小さなおじさんがいた。 相当年季のはいったギターをかかえている。 常連さんたちは興奮する。 このおじさんは、「流し」なのである。
3人連れのお客のうちの、デブのおばちゃんは、シャンソン歌手なのだとか。 そのおばちゃんが歌ったのをきっかけに、ママが、「東京キッド」を歌う。 流しとの息もぴったりで、もう、すごく、上手い。 その次はデカサンのおじさんが、「ぼくらはみんな生きている」を熱唱。 そしてそれにあわせて内田裕也風が踊る。 彼はパリで活躍する舞踏家なのだとか。 そして、素晴らしいショーをタダで楽しんでいたオイは、「なにやってんだ!オマエも歌えよっ!」と怒鳴られ、半ば強引に、石原裕次郎をズラッと歌わせられたのである。
以上新宿の、とあるお店でのお話。
飲み会の一席
飲みに誘われるのはイイけれど、そんなに急に言われても都合のつけかたというものがある。 ましてや先輩に誘われた場合、お断りするなんていう行動はそもそも選択肢にはないわけで。 そうして10人ばかりの飲み会に 同行したのである。
10人程度がぞろぞろと店内に入る。 座敷にすわる。 さて。 ともかく生だ。 ビールだ。 「えーっと生の人。」 8人が手を上げ、2人はウーロン茶。 ということで生8つちょうだいよ。
店員:「あいにくジョッキを切らしておりまして、8つもジョッキがありません。」
「は? ジョッキ無いてか。 んもうじれったいなふんとにもう。 とんかくビールを飲みたいので、ピッチャー3つよこしてくださいよ。」 とにかく喉が渇いているのである。 入れもんなんてなんでもイイからとにかく一刻も早くよく冷えたビールをくださいよ。
なんて思っているのに、とにかく速攻料理を注文したがるヤツがいるものである。 あとで注文すればよいものを、グジグジあーでもない、こーでもないとメニューとにらめっこしているやつが、奥に3人。 こいつらがまた注文決まらないの。 のどの渇きは怒りに変わりつつあり、「姉ちゃん、あのね、このメニューに載ってる料理全部もってきて。 あと手場先だけは一人2人前ずつでおねがい。」と、勝手に注文してしまう。 カンタンな居酒屋に来てるのに、そんなにつまみを厳選する必要もなかろうに。 全部注文したって頭数で割りゃーなんてことない。 さあ、ビールをもってこい。
そうしたらその3人、こんどは焼酎を注文したがる。 のび太大人版みたいな気の弱そうな外見のそいつが、やけにエラそうに「焼酎何があんの? 麦芋米? んでどれが一番ウマイの? あ、グラス?4個。いや5個。ていうか焼酎飲む人だれ?」なんて聞きやがるし。 「だから生を8つ持ってきてと、注文してるだろうが。 まあ待て、待たれよ。 生飲んでから焼酎頼めばイイじゃないか。 どれがうまいのなんて、好みにもよるだろうがしかし。」と、心の中でそいつに忠告し、リアルに「じゃ、焼酎麦芋米、それぞれ一升瓶3本もってきてちょうだい。 グラス20個に氷とお湯もおねがい。 それよりとにかくビールを持ってきてよ。」と告げる。
ピッチャーが到着。 ささ、と隣近所のグラスに注いだ。 飲むよ。 そうしたら今度は挨拶がどうのこうのとか言い出すヤツがいるぞ。 もう飲んでからでイイじゃないかまったく。
そうしてたまりにたまったうっぷんも加勢して、ビールを一気に5杯ぎゅーっと飲み干す。 新しいピッチャーを手に取り、のび太の横に座る。 そしてのび太に有無を言わさず注ぎに注ぐ。 そうして焼酎セットも用意して、のび太に焼酎の水割りを作りまくる。 のび太は「レモン汁」なるものを持参しており、これを焼酎に数滴たらせば悪酔いしないとかいうので、のび太のグラスにそれをドボドボ入れて、焼酎を注いで飲ませる。 飲ませてばかりじゃあんまりなので、オイもそのレモン汁を数滴入れて、焼酎ロックで飲んでみると、マズい。 こりゃかえって悪酔いするね。
とにかくそのレモン汁を持参した張本人のび太のグラスに焼酎のレモン割りを幾度となく作り、飲ませ、30分で潰した。 おやすみ。 のび太はやはりのび太なのである。
こんなお店
そんなお店のウワサを聞きつけた女の子2人が尋ねてきて、運良く座れたという。 そうして料理を楽しみつつ、酒を楽しんでいたわけだ。 しばらくして女2人は大将との溝が少し埋まったかな? なんて思い、軽い気持ちで聞いてみたわけだ。
「大将、その網焼きしている肉に今振りかけたものは何ですかー?」
この質問が、大将と女2人に大きな深い、決して埋まることのない溝をこしらえたのである。 とにかく大将の仕事に口をはさんではいけないわけだ。「あんだこら、え、オレの仕事がそんなに信用できないのかい。 帰れ。 帰れーっ!」と一喝。
一人の女の子はビックリして一瞬にして酔いは吹き飛び、大泣きしながら店を飛び出した。 その女の子の走り去る姿を見ながら、「もう来んなよコラ。」と追い討ちをかける大将。 一人取り残された女の子。 こっちも泣き出すまでは時間の問題か。 ああ恐ろしい。
いくらどんだけ常連の男でも、女連れで入店し、「オレこんな隠れ家的穴場職人風厳選美味酒処知ってるんだもんね。 どうだカッコイイでしょ。」なんていう下心が大将に見抜かれると入店できないらしい。
とにかく純粋に食を酒を楽しむため以外の入店は、お断りなのだ。 こんなお店、いかが?
銀座 寿司幸 本店
オイには某カニがウニャウニャしている看板で有名な会社に勤務している 知人がいる。 そいつがオイと同じ結婚披露宴に出席するということで、 来崎するとのこと。 じゃーお土産かってこいというのが当然の流れですな。
そいつの泊まるホテルの近所には、ものすごい人の良いお母さんが営業 している焼き鳥屋さんがあるのでそこで落ち合うことにしよう。 ちなみに その店にたまにいるものすごい横柄な態度で接客をする女はそのお母さんの 娘である。 あの親からこんな子が生まれるなんて不思議。
そんな話は置いといて、カニからのお土産は、3つあった。 洋菓子1つ、和菓子1つ、そしてこの寿司幸のばらちらしだったのです。
寿司幸といえば、ちらほら長崎県内にも同じ名前のお寿司屋さんがあるくらいけっこうありがちな寿司屋の名前で、その中の一軒では7人前の船盛を一人で平らげたこともあるオイでありますが、このお土産の寿司幸は、銀座数寄屋橋にあるという高級寿司店のちらし寿司だとか。 ほー。
田舎者のオイにとっては、この上ないお土産たいね。 さ、食おうか。 まずは包み。 うーん銀座にあると聞いただけで、なんだかこの包み紙も高級そうに見えてくるというオイ。 寿司幸本店なんて書いてある。 ヒモをほどいて、早速ガブつく。
うんウマカ。 ウマカですよこのちらし寿司。 メイン8つの具が渾然一体となってオイの口の中でほどけていくのであります。
具は、煮シイタケ、たまごやき、ムキエビ、煮アナゴ、白身と青魚の酢〆、海苔、おぼろ。 ちなみにばらちらしの定義としては、火を通したり、ヅケにした魚などを具に使用したものをいう。 一方生魚メインのものは吹き寄せちらしと呼ばれる。
一気に食べ終えると、ワッパの底には殺菌効果のある笹の葉が敷かれてありやす。 葉についた米粒も、こすりとって食いたいぐらい。
バラン(だったかな)は職人さんが丁寧に素早く飾り切りしたものと思われますよ。 いやぁー満足なちらし寿司でした。 もう一個ちょうだいというかんじ。
すしの味
すしの味は
たねとしやりとさびと
親父の手あかにある
森繁久弥-緋鞘-
小田急線千歳船橋駅ホームの、すしやの宣伝看板に書いてあるそうな。
シメサバが変
この店最近よくTVCMなんかやってて、長崎ではもうじき「さるく博」なんか開催されるというのに、もしも観光客の方がこの店に入り、シメサバを食ったとすると、なんとお詫びを申し上げてよいのかワカラン次第でありますホント。 長崎は魚いっぱいあるんだからさぁー。 もうちょいちゃんとした料理を作ってくださいよ某居酒屋さん。
やな店
たまにはなじみの居酒屋以外の店へ浮気してみるのもよかかな。 さて。
居酒屋Aの看板 : 「サーモンの刺身 550円 脂のっています!」
とか店の前に小さい看板がでてたらそこには入らんよ。 だってさ、サーモンっていえば養殖でマルマル太っているのがチリあたりから輸入されているものがほとんどなワケでさ、脂がのってるというかのせているわけでさ。 旬もなにもない年中ある魚だからさ、それをオススメに掲げているということは、「このみせイイ魚なかとばいね。」とか勘ぐるわけさね。 よってパスっす。
居酒屋B : 「本日のオススメ -イカゲソ、ハマチの刺身、かき揚げ- 」
うーんこの店の前、たまに通るんだけど、いつも同じオススメメニュー。 毎日同じものをすすめられてもね。 困る。 行かない。
居酒屋C : 「本日のオスメ -レバ刺し- 」
の文字が目に飛び込んできた瞬間、気がついたら入店し、レバ刺しとキムチと生中を注文。 こじんまりした店なので、厨房の料理人の声が丸聞こえ。 「あ、レバ刺し無い!」 思わず自分の耳を疑いたくなるようなやりとりが聞こえてきた後、注文聞きの兄ちゃんが、「レバ刺しないです。」と言う。
「無いです。」か。 そんな時はこう言うんです。 「すみません。 今日のオススメの看板にはレバ刺しと書いておりましたが、切らしてしまいました。 もうしわけごさいません。」と。 どうもあなたがたのレバ刺しに対する思いとオイのそれではかなりの温度差があるね。 でもまあオイも大人だし。 入店したのならばしょうがない。 ちょこっと食って飲んで、別の店行くか。 ということで、あまり豊富でないメニューの中から適当にたのんで、最後に鳥皮を注文。 「(オイ)鳥皮をください。」「(注文兄ちゃん)は?皮(かぁわぁぁ)?」
仏のオイが黙っていたのもここまで。 こんな態度の接客をするような人間のいる店では、オイなんも食わんもんね。 その兄ちゃんにこっぴどく説教したあげく、厨房奥のマスターにも気の済むまで文句を言って、速攻店をでた。 鳥皮をたのんで何が悪い。 いいじゃないか鳥皮を食ったって。 だってオマエの店のメニューに鳥皮って書いてるんだよホラここに。 大体さ、おかしいと思ったんだよ鳥皮があるなんてさ。 なんか君んとこのメニューの中でもその鳥皮だけ浮いてたんだよね。 だから異様に目に付いて、注文しちゃったんだよねオイ。
もしかするとその兄ちゃんは割と年のいった新人で、まさか自分が働いているこの店に鳥皮があるなんてそんなハズはないだろうと考えたのかもしれん。 オレが働いているこの店に、焼き鳥屋でもないのに鳥皮なんてあるかよと、オイに言いたかったのかもしれん。 でもね、あるんですよ鳥皮が。 ホラここに書いてある。
というふんとにもう腹の立つ思いをしたあとの酒は、それはそれで美味いんだなまた。 やっぱりいつもの店に行くとするか。