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2011/07/11

賀茂鶴の樽はココでしか飲めない! 大甚【日本一の居酒屋】

大甚のカウンター

PM4:30入店すでにお客は多数

店に入ると長テーブルがズラリと並んでいて、どのテーブルにも客がギッシリ座っている。 ガヤガヤ楽しげな会話が飛び交う。

酒は賀茂鶴、樽ならなお良し

大甚の賀茂鶴

台の上に様々な酒肴が盛られた小皿や鉢が並んでおり、その中から食べたいものを自分で取る。 純和風の一品ばかりで、店内にデンと据えられている賀茂鶴の大樽との相性は抜群。 この賀茂鶴がまた、髪が逆立つほど旨い。

樽酒特有の薫り…それがぬる燗により尚増長されている。

選び放題の酒肴

大甚の肴

刺身は専属の職人が立つ厨房の前に並べられている。 大衆酒場だというのに、ヒラメは天然ものだったりする。

お客の質

肴をつまみながら呑み、しみじみ味わった後に猪口をテーブルに戻したところ、 そのタイミングに合わせたかのように「うまーい・・・」という声がした。 声の主は、片隅で飲んでいる老人だ。

こちらを見てニヤリと笑っている。

何か受け応えねばと「こんな旨い酒呑んだことないですよ」と言えば、「ここでしか飲めない酒だ」と老人。 彼は時折店主と親しげに言葉を交わしながら、「こんな旨い刺身をこの値段では普通食えない」とか、「この店のテーブルは全部ケヤキ製だ」等という「大甚こぼればなし」を聞かせてくれた。 かなり古くからの常連なのだろう。

大甚。

名古屋に向かう際は、この店で呑むことを楽しみにしており、通いだしてからもう五年ほどになる。 まさに「日本一の居酒屋」だ。

つまみを二、三皿と刺身を一皿、生ビールを空けてから賀茂鶴を二、三本飲んだら、テーブル上の自分の陣地は空いた器だらけになる。

だからといって、これらの空き皿を店の人が下げてくれるわけではない。 その理由は皿、徳利の数でお勘定をするからなのだ、しかもソロバンで。

皿勘定システムは店に都合が良かろうが又、客にとっても嬉しいものだ。

目の前が皿で一杯になれば「そろそろ立つか」という目安にもなる。 長居してダラダラ飲む店ではない。 そして勘定がまた飲み食いした量からすると、拍子抜けするほどに安い。

大甚を存分に味わった後は、気持ちよくてつい錦あたりに飛んでいってしまうのだった。


『食いしん坊』の中の大甚

小島政二郎の『食いしん坊』に大甚の件があった。 以下引用する。

夜は、大甚という腰掛けの飲み屋へ連れて行かれた。

腰掛けの飲み屋と言っても、あんな大掛かりな店は東京にも大阪にもあるまい。 大凡(おおよそ)の見当で、五六十人は腰掛けられるだろう、そんな広間が一階と二階と二つある。

裏に中店というのがあって、この方が昔の面影を多少残しているとあとで吉井勇さんから教えられた。 中店も、ちょいと覗いて置けばよかった。

とにかくここの繁昌振りは、壮観と言うより外はない。 第一、これだけ品数の多い店は、ちょいとあるまい。

サバ、イサキの子、イカのミソ、イワシの煮付け、かいわり菜のお浸し、飯蛸、カニ、鶏のうま煮、同じく肝、枝豆、トコブシ、エビのうま煮、エビとイカのキュウリモミ、穴子、アユ、黒鯛、イワシのナマ、小ナガセ(名古屋で小さなエビのこと)、イナのヘソ、焼鳥(スズメ)、ギンナン、酢蛸、シャコ、サシミ(マグロと鯛)、アワビ、イカのキン玉、里芋、ズラリと棚に並んでいる品を一つ残さず書き留めて来たのがこれ。 みんなでざっと三十種類はある。

酒は菊正と賀茂鶴。 セルフ・サービスではないが、好きなものを注文すると、殆ど右から左へと目の前に運ばれて来る。

面白いのは、カラになっても、お皿も徳利もそのまンまにして下げて行かない。 私はカラになったものはドンドン片付けるのが好きなので、女中さんを呼んで下げさせようとすると、ここへ案内してくれた狩野近雄が、「いけない、いけない」という。

あとで分かったことだが、皿で値が決まっているのだ。 主人側は、皿を一ト目見れば、幾らだかすぐ分かる。 大きなソロバンを持って来て、皿と徳利の大小を見ながら、順々に入れて行く。

イサキの子の煮付け、これは初めて食べたが、うまいものだ。 これから一度どこかで食べた記憶のあるイナのヘソ、これは当日第一のうまいものだった。 こんなものを食べていると、私のような酒を嗜まない者でも、ついに杯に手が行く。 あれで五、六杯は飲んだろうか。

見ていると、二人連れ、三人連れが多い。 中には礼儀として、夫婦連れと言って置くが、実はいろ女を連れた紳士も見掛けないではなかった。 一人と言うのが少いせいもあるだろうが、見知らない向こう前の客に、まあ一杯などと言って杯をさすような狼藉者は一人も見掛けなかった。

そういう点、弱虫の私なんかも、くつろいだ感じで悠々としていられた。

ここには飯というものがない。 そのせいだろう、飲むだけ飲んで泥酔して人に迷惑を掛ける非紳士は一人もいなかった。 いざという時、帰ってからの飯のおかずにでもするのだろう、一ト品、二タ品包んで貰って家路に向かう姿も見掛けた。 私たちは同勢三人だったが、いよいよお勘定となった時、「今夜の勘定は幾らだろう?」と言うことになった。 一人は、小島がここの店で一番高いカニを食ったから、相当値は張るぞ、まず三千円かな、と、自分の飲んだ酒のことは棚に上げて、そんなことを言い出した。 その尾に付いて、みんなそれぞれ当て推量の金高を言った。

ところが、おかみさんが来て、ぱちぱちソロバンをはじいて、「毎度有難う存じます。 千四百三十八円頂きます」と名古屋弁で言われた時には、みんなその安いのにビックリした。 一人も当たったものなし。 宿へ帰ってから三で割って見たところ、一人頭四百八十円だった。

食いしん坊』は、小島政二郎が雑誌『あまカラ』に昭和29年10月~32年9月まで連載した話をまとめた本である。

今から50年以上前の話になるが、この中での大甚と今の大甚に、何ら変わりがないことがよくわかる。

※大甚の鯖酢を作りました(20140701追記)。

前後の投稿


“賀茂鶴の樽はココでしか飲めない! 大甚【日本一の居酒屋】” への4件のフィードバック

  1. Nancy より:

    名古屋っ子です。
    タイトルだけ見て、まさか名古屋の??と読み進んだら、やっぱり名古屋の、でした!
    なんというか、若輩女子には敷居が高かったですが、
    数年前オジサマ方に連れられて以来のファンです。
    名古屋や伏見近辺には昔ながらの立飲みの串揚げ屋やなんかも意外とありますが、
    ココは別格な感じですよね。
    子を産み落としたら是非行きたいお店です。
    あと、うな富士にも!
    (いつになるやら~☆)

  2. オイ より:

    名古屋よりようこそ。 うらやましいですねあんなお店があるところに住んでおられるなんて。 もしそうだったら多分毎日行っちゃいます。 確かに若い女性の姿は見当たりませんね。 でも、もしも女性が一人でテーブルに座り、賀茂鶴をグイッとやっていたら絵になるでしょうね。
    うな富士!旨そうなお店ですね、今度是非行ってみます。 うなぎは「いば昇」だと教えられたので開拓していませんでした。 それにしても名古屋は趣のあるお店が多い街です。 大好きです。
    夏はとても暑いそうですが、無事元気なお子さんをお産みになられてくださいね。

  3. mashiro より:

    素敵なお店ですね。ちょっと調べてみました。
    先日、暑い名古屋に出張で行ってきました。出張のときは食事に行ける時間が遅くなってしまうので、ホテルの近場で済ませてます。
    でも、「日本一の居酒屋」とあらば、前泊でも後泊でもして、是非とも行かねば・・。
    次回の名古屋出張は・・・・来年かな・・・(涙)
    絶対に忘れないようにします。
    カウンターでの賀茂鶴、グイッとやってみようかしら。

  4. オイ より:

    超おすすめです! 場の空気感すら肴になります。 

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