2011年1月アーカイブ

まさかの一瞬

其の一

鮨屋でカワハギの肝和えを肴に飲んでいたときのこと。

二人組の客が入ってきて、席に着くやいなや、とりあえずビールを注文した。 ひとりは大ビールでもうひとりは小。

すぐさまビールはお盆にのせられ運ばれてきた。

女給さんは、まず小を置いた。 次いで大ビールを手に取ったところまではよかったが、何としたことか、うっかり手をすべらせてしまい、こともあろうに、客の背中にドバーッ、と全部ひっくり返してしまった・・・。

かけられた当人は何が起きたかと跳ねるように立ち上がった。 相方は目を見開いたまま動けずにいる。

オイは酒を噴出してしまうほど驚いたが・・・ていうか、本当に驚いた時は噴き出すことすらできない。 もう、ただボー然と、その光景を見ているだけだった。

カウンター内の店主も唖然としていたが、すぐ我に返り「申し訳ございません、おいっ、おしぼりっ!」と店の奥にむかって叫んだ。

すぐさま若い板前さんがおしぼりを山ほど抱えて走ってきて、ビールを浴びた客の体を拭いている。 女給さんはどうすることもできず、ただボー然としている。

「あービックリした。 こんな寒い日に、まさかビールを浴びるなんて思ってもみなかったよ。 その上着、高いもんじゃないからそんなに拭かなくてもいいよ、テキトーに乾かしといて」 とかけられた当人はアッサリ。 怒られなかったことが逆に涙腺を刺激したらしく、女給さんは「すみません」とウルウルしていた。

椅子もずぶ濡れだったから、二人組は席を移る事になった。 それに伴い、オイも移動を余儀なくされた。

そして何事も無かったかのように、時は流れだした。

はだしの一歩

深酒の普段より遅く起きた。

少し頭痛がするので風呂を沸かし、心臓がドクドクしてくるまでじっくりと浸る。 汗がにじんでくるまで熱い湯に浸かり、出て冷水シャワーをかぶり、また浸かって・・・と繰り返せばアルコールなんて飛んでいってしまう。

スッキリとしたところで風呂からあがり、バスタオルでザッと体を拭いてから、そのままタオルを腰に巻いた。 体中から汗が吹き出てくる。 クールダウンするために窓を開け放つと、一面雪だらけなもんだから驚いたというか、今日そんな天気予報だったっけ?

はげしく降り注ぐ雪。 みるみる積もってゆく雪。 その光景を眺めていたら、つい外へ出てみたくなってきた。 こんだけ降っていれば人なんて歩いていないだろうし、車はチェーンを巻かねば走行不能だろう。

身に着けているものはタオル一枚。 素足で、雪の上へ第一歩を踏み出した。 のぼせるほど温まっているので、まったく冷たさを感じない。 そのまま数歩進んでみる。 当たり前だが、雪に残る足跡は、素足の形である。 そういえば、雪の上に裸足の人間の足跡がある光景ってはじめてだ。 記念に撮影でもしておこうかと思いつくやいなや、急に寒さが襲ってきた。 冷凍人間になっちまう、急いで家に戻った。

大人の科学マガジン 30号 鬼才 テオ・ヤンセンの世界

元日、皆が寝静まった夜中、熱燗を飲みながら撮りためておいた番組をイロイロ眺めていた。 すると思わず、口から酒を噴出しそうになるほど衝撃的な映像に出くわした。

テオ・ヤンセンのストランド・ビースト。 番組名は「風を食べる生物~生命を創る男 テオ・ヤンセンの挑戦~」。

「竹細工のジャングルジム」みたいなのが、ワシャワシャ無数の足をせわしく動かしながら、砂浜を歩いている。 「何だあこりゃ」

ほろ酔い加減は一気にさめて、食い入るように見続けた。

ビーストの作者は物理学者、コラムニスト、画家などさまざまな顔を持つテオ・ヤンセン氏。

ストランド・ビーストの動くエネルギーは「風のみ」である。 体は配水管などに使われるプラスチックチューブで作られていて、風におされて、簡単に動く。 その秘密は足の形状にあり、わずかな力を受けただけでスムーズに動き、歩き出す。

番組を見終わり眠りについたが、ワシャワシャが頭から離れない。

「自作してみたいなあ、でもまずムリだろうなあ、もしかするとミニチュアやレプリカが売られているのかもしれない。 でもあのサイズゆえ、風を受けただけで歩くんだろうから無いか。」

とか考えているうちにいつの間にか寝てしまった。

しばらくして、ビーストのことなぞ忘れかけていた頃、とある雑誌で「付録:テオ・ヤンセンのミニビースト」という記事を見つけてしまった。

学研が出している『大人の科学マガジン』という雑誌で、テオ・ヤンセン特集をするとある。 その付録が、ミニ・ビーストだ。 すぐさまアマゾンに注文し、雑誌発売日当日に到着した。

大人の科学マガジン テオヤンセン

オーキッド

蘭。 野生に咲くものだけで2万5千種。 人工交配によって生み出された品種は13万に及ぶという。 そして全ての品種は、イギリス園芸協会が発行するリストに記されている。

19世紀のヨーロッパで大ブームが巻き起こり、王侯貴族はこぞって珍しい蘭を求め、ついにはオーキッド(蘭)ハンターなる人々も現れるようになる。

人々を魅了する蘭の魅力を、『青い鳥』の作者、メーテルリンクはこう評した。

植物の知性が、最も完成度が高く、調和のとれた形で現れているのが、蘭だ

蘭の知性とは?

それは、他の花にはない特徴的な花びらである「リップ」があるということである。

リップは何のためにあるのかといえば、誘惑するためにある。 誰を?動物たちをだ。

九十九島せんぺい

なぜか子供たちに人気のあるせんぺいなんだよなあ。 「せんべい」ではなく、やはり「せんぺい」なんだよなあ。

瓜子

寒い寒い、早くスイカをかじれる夏が来ないかなあ。

昔、切り分けたスイカを種ごと全部食べてしまう男がいた。 種を一粒も出さず、全部果肉と一緒に飲み込んでしまう。 その理由は、いちいち種を出すのが面倒だから。

彼に影響された少年オイは、ある日、マネをして種ごとスイカを食べてみた。 食べれなくもない。 となりでそれを見ていた親父は「種はぺっぺと出すもんだ。 そんな喰いかたしてたら盲腸になるぞ」と言った。

何年かして、オイは盲腸になり、手術するハメになった。 スイカの種が原因かどうかはわからない。

瓜子

中国には瓜子という食べ物がある。 「スイカの種」のことで、食べだすと、止まらなくなるのだとか。 食べ方にはコツがあり、中身を歯と舌先で取り出す。 と書けば簡単そうだが、熟練を要す技らしい。

瓜子の話は邱 永漢の『食は広州に在り』にあったもので、ある日邱さんは瓜子を持って、檀さん宅を訪問した。

日本文壇における軽率妄動派のように目されている檀さんは、慣れない手つきで何度も殻ごとかみつぶしながら、でもなかなか味なことを言われた。

「西瓜の種をかんでいると、気分がしずまりますね」

是非瓜子を喰ってみたい。 だが見たこともないし、はたして売られているものなのだろうか? もしかすると自作できるものかもしれん。 「西瓜の種を天日干しするだけ」とか。 ああ早く夏よ来い。

子供たちよ!

次女

一歳半検診へ。 歯科検診や身長、体重を計ったり、育児相談などもある。 ブロックをうずたかく積み上げて先生にほめられると、臆することなくドヤガオでキメるところがいかにも次女らしい。

次男

サンタさんにもらったプラレールに熱中し、毎日コースを変えて走らせていたところ、やがてレールの上を走らせることがイヤになってきて、自由気ままに、トーマスとパーシーを部屋の中で走らせるようになった。

その光景を眺めていると、ちゃんとストーリーがあるようで、力尽きたトーマスをパーシーが後ろから押して助けたり、時にはバトルさせたりしている。 クライマックスでは、フェバリットコレクションの恐竜たちが登場する。 もはやプラレールではない。

ピュロロロロ~

とある料理屋さんの主人は、利き酒師だ。

「かっこいいですよね、オイもいつかはなりたいです」といえば、「利き酒師には誰でもなれるよ、ただ、本当に酒の味がわかる人間にならないとね。 私は今でも修行の最中」という返事だった。 どんな業界にでも当てはまる話だと思った。

ひと段落した主人は、この度はじめて入手した銘柄の一升瓶を取り出して封を開け、味見をはじめた。 オイは飲みながら、その様子をじっと眺めていた。

よくある利き酒用の2重丸が入った猪口を使うのではなく、薄く透明なショットグラスを用いている。

バカラのグラス

行きつけの酒屋さんは良い酒屋さんだか時々勘定を間違える。

いくつか酒を購入し、いざ会計を済ませてレシートを見ると、合計金額が合わないことしばしば。

少なく請求されていることはなく、いつも大体七、八百円多い。 店員さんを見ていると、瓶のラベルにあるバーコードをピッと読み取って会計しているわけだから、間違えようもないハズなんだけど、間違ってしまう。

別の店員さんが会計をしても違っていることがあるから、レジがおかしいものと思われる。 どうにかしてください。

無意志的記憶

正月婆ちゃん家へ遊びに行った折、仏壇に手を合わせていると、誰かが後ろから力なく肩をたたいてきた。 振り返ると次男が立っていて、「ちょっとこっちに来て」と言う。 顔は白々としていて表情は冴えない。

手をひかれて言われるがままについていくと、そこには一本の柱があった。 「こんな所に柱あったっけ?」

次男はオイの顔を見上げ、それからすぐに柱の根元を指さした。

パパ、木から足がはえているよ。」 

樽酒の香り

生酒を軽く燗して飲む」という技を居酒屋店主に習い、早速実行してみるとこれがまた旨いのなんの。 生酒の芳醇さはそのままに燗で味の広がりが出ているという荘厳な酒になった。 一口すすると、舌が百畳ありその隅々にまで味が行き届いている真っ最中、というようなイメージが広がる。 何度口にしても、味が広がる余韻を楽しむことができる。 目を閉じて、ゆっくりと味わう。

突如ひらめいた。 「もしかして、一升瓶の中に吉野杉の切れ端をいくつか放り込んでおけば、樽酒風味になったりして。」 そしてこのようにつぶやくと、kurosunadaiさんから「なりますよー。つけとく時間が難しいけど。」という返事をいただいた。

それでは早速、樽酒の樽の上ぶたを叩き割って、一升瓶の中に入れておいた。

極細麺から皿うどんへ

予想していたとおり、大晦日は雪のせいでお客の大半が来れなかった。

したがって、娘と一緒にせっせと打った極細麺30玉の大半が消費できなかった。

年が明けて一日。 朝起きてみるとまだ雪が降っていて、これではお出かけできそうにない。 仕方がない、たまにはゆっくりと過ごしてみるか。 朝から熱い風呂に入り、それから日本酒を開け、チビリチビリと飲みはじめた。

昼過ぎなり、家族から「なんか腹減った」コールがあったので、極細麺を少し揉みほぐしてから胡麻油で色よく揚げて、皿うどんの細めんを作った。 予想通りの仕上がり。 こんな旨いパリパリ麺食ったことがない。

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