いっぱい・・・食わされた話
来年小学一年生になる息子の、ランドセルがどうのこうのとかいう話でデパートにつれていかれる。 嫁以外はあまり気が進まず、天気もいいんだから、秋風の中ハウステンボスとかでブラつきたいみたいな思いをその他はもっている。
いつもながら嫁の買い物に付き合うのが苦痛である。 どうしてそこで悩む必要があるのだ。 即、買え! と念じたりする。
・・・・・・・・・・・・あーもね、とにかく退屈極まりない。 長男はとっくにしびれをきらして、キッチン用品売り場に向かい、桜皮の茶筒をズッポンバッコンやって遊んでいる。
娘はOXO製品を見るやいなや「あ、お家にあるやつだ!!」と感動している。 1歳の次男はというと、着ぐるみのアンパンマンにくびったけ。 だめだめ、それはもってかえれないし第一、中に人がいる。
オイは…ホームグラウンドである地下食品売り場へとこっそり向かった。
ちょうど混雑している時間だ。 その中、様々な食材、調味料、酒、おせちの予約などを見て回る。 あー、たのしー。
照明効果によりテカテカ艶やかな惣菜たちはどれもおいしそうだ。 思わずついうっかり買ってしまいそうになる。
前方から「500円、500円、2パックで800円!!」という売り場のおばちゃんの声が聞こえてくる。
2パックで800円なるものの正体は、天ぷらだった。 連呼するおばちゃんの横をそのまま通り過ぎようとした時、突如眼前にうな重が差し出されて驚いたのもつかの間「半額、500円!!」と、うなぎ売りのおばちゃんは声高々に宣言した。
天ぷら売りのおばちゃんの向かいには、うな重売りのおばちゃんが待ち構えていたのだ。
天ぷらが2パック800円とはお買い得かもしれんな、と考えていたところ急に差し出されたうな重。 しかも半額。 通り過ぎようとする瞬間に声をかけるその絶妙なタイミング。 もはや買わざるを得ない。 「じゃ、ひとつ」
予定にない500円のうな重を買って受け取り、その場を立ち去ろうとすると天ぷらおばちゃんがまた「2パックで800円!!」と大声をあげている。 「じゃ、2コ」 買ってしまったのだ。
うな重と天ぷらをさげて嫁のもとへ戻ると、まだ物色中だった。 どうしてうな重と天ぷらを持っているのかを聞かれ、ワケを話したら鼻で笑われた。
家に帰り、うな重と天ぷらを食べてみた。 どちらもおいしくなかった。 天ぷらの立派なエビは衣がデカいだけで中はスカスカ。 その他の天ダネも同じ。 第一揚げたてでない天ぷらなど旨いわけなかろうもん。 どうして買ってしまったのだろうか?
うな重は、一見びっしり敷きつめられているようにみえたウナギが、実は一部奈良漬だったり、飯全体に煮汁がまぶされている為、ウナギの少なさがカムフラージュされているという巧妙ぶり。 もしも定価の1000円で購入したのならば、おもわず暴れてしまいそうに貧相な、うな重だったのである。
でもこれは買ったほうに責任がある。 「安物買いの銭失い」という幼い頃ばあちゃんに教わった教訓が、いまだにわかっていない自分を責めるべきである。 オイは少し悔しがりながら、責任をもって全部平らげてしまった。
いやしかし、スッキリするぐらいマズかった。 逆にありがとう。