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2007/10/11

ふぐ料理のお店

知り合いのそのまた知り合いに元プロ野球選手がおり、彼行きつけのふぐ料理屋が美味しいという話なのでひとつオイも行かないかという誘いをうけて、同行した。 ふぐならば旨いに決まっているでしょう。

近くまでタクシーで移動して、そこからしばらく歩くと河豚屋に着く、という話だったのだが、歩いても歩いても辿りつかない。 元プロは道を間違えたのではなかろうか? と考え始めた頃、ようやくフグ屋についた。 こじんまりとしているが、立派な建物である。

一人ではとても入れそうにない。 一見さんお断りとか言われそうだ。 皆一列に並び、店内へ入っていく。 「いらっしゃいませー」と女将さんが出迎えてくれる。 年の頃は70ちょっとで品格がある。 L字型のカウンターに順番に座る。 椅子の背もたれがやけに長くてウケル。

女将さんは奥から順番に名刺を渡しはじめる。 そしてその後、店の歴史を語りはじめる。 「この店は最初屋台から始まり、今年で40年になります。 最初の頃は…」と、以外に長話だった。 皆、一応敬意を示すために「ほー、へぇー」とかうなずきながら上手に話しを聞いた。

「さて、皆さんお飲み物はビールでよろしいでしょうか?」

「はい。 皆ビールでお願いします」 とひとりが代表して答えた次の瞬間、キツネ目の男が「ワシ風邪引いているからお茶でよろしく」という。 フグを、お茶と、食べるのか…・

突然、和服姿の女が入ってきた。 「いらっしゃいませ」というからにはこの店の者なのであろうが、その顔立ちや動作にはなにやらかすかな怒りが見え隠れするような気がする。 女将の隣に立ち、一同に挨拶をする。 若女将なのだ。 女将と若女将はなにやら小声でやりとりをしたあと、サーバーからジョッキへビールを注ぎ始める。

女将は先ほどからジョッキにビールを注いでいるのだが、どうにも泡ばかりである。 半分、いやもしかすると6割は泡?という生ビールを客に差し出す。 ジョッキを持つ手がブルブルと震えているので、コースターの上はビールだらけになる。 どういう反応をすればいいのか一瞬考える。

次の瞬間、若女将が女将の持つジョッキを取り上げて、自らビールを注ぎはじめた。 ファンデーションを厚塗りしているにもかかわらず顔色はどす黒く変色しており、誰がどうみても怒っている。 女将さんはバツが悪そうに別の作業に移る。 若女将の気持ちもわからんでもないが、客の前でそんなにトゲトゲしくされても困るわけで…。

「さあ皆さん、まずはクエの薄作りを召し上がっていただきましょう!」

気をとりなおした女将がクエの大皿を運んでくる。 なにやら足元がおぼつかなくて、見ていてドキドキする。 どうか一刻も早く、カウンターの上に大皿を設置し終えますように、と祈らずにはいられない。 ホッ。 無事に大皿設置完了。 ハラハラさせやがって、飯どころじゃねぇぞまったく。 「しかしウマソウなアラですね、アラの刺身なんてなかなか口に入りませんからね、ハハハ。 えーっとポン酢はどこにあるのかなー…」

丸くていかにも高価そうな大皿に薄切りのクエがズラリと並べられており、中央にネギ、ミョウガ、紫蘇、もみじおろしなどの薬味がこんもりと盛られている。 おもわず生ツバがでるが、とり皿と、ポン酢がない。 しばらくして女将はそれに気づく。 「あー、すいませんでした。 皿とポン酢がありませんねー」

カウンターの下は食器入れになっており、そこから8枚皿を取り出す。 そして一枚ずつ我々の前に皿を出そうとした瞬間、前につんのめって皿を客に投げてしまった。 そしてその皿は突き出しの入った小鉢に衝突し、割れて、飛び散った。 一同、唖然とする。

女将は一瞬焦りを色を見せたが、すぐさまとりなおして、割れた皿を片付けて、皿を一枚一枚配り終えた。 そして、自慢の手作りポン酢をもってきた。 イロイロあったけれど、これでようやくクエが食べられるというわけだ。 みんなはじめは恐る恐る一枚ずつクエを箸でつまんでは口に運び、かみしめ、喜びの声を上げていたのだが、誰かがクエをゴソッと箸ですくい上げ、ポン酢に浸してムシャムシャ食ったのをキッカケに、我もクエをごっそりと、我もクエをごっそりと、という風に奪い合いになった。 一瞬で、クエは無くなってしまった。

次に危なっかしく運ばれてきたのは待望の河豚刺しであり、クエと同じように盛り付けられている。 皆箸を手に大皿の到着を待ち構えており、カウンターに置かれた瞬間、ヌーっと8本の腕が大皿に伸びた。 当たり前だが美味しい。

さて。 ここらで日本酒でも飲みながら河豚つまみたいですな。 女将さん、なにか日本酒ございますか? と尋ねると「あー、お酒ですね、取って置きの焼酎、魔王がありますよ、人気ですよ」と言う。 うーん、魔王はさておきオイらは日本酒を……でもまあいいか。 じゃ魔王をくださいな。 ロックで。

女将は危なっかしくロックグラスを取りだし、魔王を棚から危なげに持ってきて、厨房に氷を頼み、時間をかけて魔王の封をあけて、魔王のロックを作ってくれた。 ロックっていうか、氷はほとんど入っておらず、並々と魔王が注がれている。 うーん、まあいいかグビッ。

皆それぞれ飲みながら、河豚をつまみながら、楽しい宴を満喫していると、女将が現れて「穴子の刺身食べませんか?」と言う。 美味しそうだ、満場一致でお願いすることにした。 と、思ったら、一人穴子の刺身は食えないとかいうヤツがいる。 以前別の店で穴子の刺身を食べてアタッタとかで。 これを聞いた女将は今までにない俊敏な動きでイケスから穴子を救い出して我々に見せる。 「ホレ、活きてる穴子なんですよ。 当たるわけないでっしゃろ」

穴子食えない氏は、仲間からもダメダシをされる。 食えないならだまって食わぬならよいだろうが、オマエが食わなくたって皆が食うに決まってんだろ。 穴子氏はこの件について我らの長老から4時間にわたる説教を受けるハメになった。

この長老というのがまたやっかいな人で、食い物にウルサイし、他のことにもウルサイ。 たらふく食って飲んだ後にだされた味噌汁に使われている鰹節がイケナイということで、わざわざ女将にそう言う。 使っている鰹節を見せやがれ! と段々エスカレートしてくる。 女将もシカトしておけばよいものをこれがまた正直に使っている鰹節を持ってきてしまう。 それを見た長老は、女将を目の前に、右手で鰹節を握り締めながら、どこがイケナイだの、どこそこの鰹節を使うようにしろだの、たまに穴子食えない氏のほうを向いて怒鳴ったり、大変な騒ぎになった。

本当の話だが、女将は我々が食事をしている間に計4回、食器を派手に割った。 若女将の態度から推測すると、これはいつものことなのかもしれない。 できることならばお店には立ってもらいたくないのかもしれない。 もう引退してもらいたいのかもしれない。

でも女将が商売を始めて40年。 はじめはリヤカーを引いた屋台から初めて、頑張って、ビルを建てた。 今では多くの客に贔屓にされて、本当に嬉しい。 今こうして皆さんに会えるのも、一番つらい時期に、○○銀行がお金を貸してくれたからだ。 だから○○銀行のほうに足を向けて寝れない。 ほんと辛かった。 らしい。 5、6回同じことを聞いたので覚えてしまった。

河豚も美味しいが、憎めない女将さんのいるフグ屋だった。

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